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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
白銀の聖剣と漆黒の聖鞘

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すり替えⅢ

 数分経つと、リブラ枢機卿とマックスが読める方の一冊を手に戻って来た。



「お待たせしました。ページの最後まで写し終わったので、少しの時間で良ければお貸しできます。ただ、万が一のことがあってはいけないので、私の目の届く場所でお願いしますね」


「ありがとうございます。ああ、マックスさん。席へどうぞ」



 勇輝は席を立ち上がると、マックスに譲る。片手を上げたマックスは、丁寧に本を置いて表紙を捲った。最初のページは誰もが触れるからか、縁が黒ずんでおり、よれている。



「リブラさん。こっちの本はどうしますか? 残念ながら、俺たちもあまり読める部分が無かったみたいで……」


「そうですか。それは残念です。後は魔法による思念の読み取りを複数人がかりで試すくらいしか方法がありません。最悪の場合、寄贈してくれた店主には悪いですが、廃棄処分かもしれませんね」



 いくら当時の記録が書かれていたとはいえ、読めなければただのゴミ。保管できる場所には限りがあるので、リブラ枢機卿の判断は間違っていない。


 勇輝が落ち込んでいると、マックスが小さく声を上げた。



「へぇ、二代目勇者は破天荒な奴だったんだな。人助けをしたいがために、聖剣だけ引き抜いて一人旅とは随分と自己中心的なお人好しだ。俺は結構好きだけどな」


「じゃあ、聖女とか黒騎士は全員置いてかれたってことか? それはそれで迷惑じゃねえか」



 ウッドが肩越しに本を覗き見る。


 二人が見ている本の内容は勇輝も桜と一緒に目を通させてもらった。本の筆者は黒騎士隊に所属していた何者からしく、一般人が知らないだろう内容も詳細に書かれていた。


 二代目勇者は鞘を置き去りにして出立。代わりとなる勇者代理が試練のダンジョンをクリアし、聖剣が本来持つ力を置き忘れていた鞘へ保管。勇者代理と聖女、そして一名の黒騎士を護衛に引き連れて、勇者を追いかけるという形で記されていた。


 その場面を石像として残そうとした店主の感性は素晴らしいものだと言える。本の内容が世に公開されていれば、演劇や吟遊詩人によって多くの人へと語り継がれていてもおかしくはない。或いは、その作品こそが始点となると捉えることもできる。


 記録されるのみで語り継がれていなかった理由は、勇者が聖女を置いていったという内容が、当時の枢機卿たちからすれば広まって欲しくないものだったからだろう。



「因みに、聖剣として何か覚えていたりすることは?」


『悪いな。きれいさっぱり何も覚えちゃ――いや、鞘を忘れられたっていうのは、覚えがあるな。自分の半身がないみたいなもんだから、仕方ないと言えば仕方ない、か』



 周囲に響くような唸り声を思念で送りつけて来る聖剣に、勇輝は顔を歪めながらもリブラ枢機卿に本を手渡した。


 受け取ったリブラ枢機卿も、珍しく表情を歪ませており、彼自身にも何か思うところがあるように見える。



「流石にエトナ様に魔法を掛けるという訳にもいきませんからね。そこは自力で思い出していただくしかないかと」


『まぁ、俺様を洗脳しようとする間抜けもいるかもしれないが、そういった類の魔法はだいたい無効化しちまうからな。多分、その系統の魔法も効かないだろうよ』



 ひっそりと記憶を読み取ったり、思い出させたりする魔法をリシアに習得してもらうことも考えていた勇輝だったが、どうやら無駄な努力をさせなくて済んだ。ほっとする勇輝だったが、学習意欲が高い魔法使いならば、お願いしなくても自分から学ぼうとするかもしれないという考えに至る。


 事実、後になって分かったことだが、桜が購入した本を読んで精神に作用する魔法の本を買う決意をリシアは固めていたとか。



「でも、レナがやろうとしていたように物理的に拷問をするって言う手段が残ってるぜ。ショックで思い出すんじゃねえか?」


『お前、それが勇者の護衛をする騎士の発言か!? 人でなし! 魔王!』


「はっはっはっ、それが嫌ならさっさと思い出すんだな!」



 ウッドがわざとらしく中指の関節を聖剣に押し付ける。傍から見ている勇輝は気が気でなかった。枢機卿の見ている前で聖剣を脅す行為に、ではない。自分たちが行った「ある作戦」がバレていないか、ということに。

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