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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
白銀の聖剣と漆黒の聖鞘

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すり替えⅡ

「これですね。文字がほとんど掠れて見えなくなっているのは。本が普通に開くことができただけでも僥倖といったところですね。何か解読できましたか?」


「いえ、正直何が書かれていたかも全く……。各ページごとにインクに残った思念を読み取れないか魔法を使っていますが、厳しいと言わざるを得ません」



 神官が申し訳なさそうに呟く。それでも、諦めきれないのかルーペを握る手を動かし続けている。


 勇輝も遠目から覗いたが、文字が薄かったり紙自体が劣化していたりするのが確認できた。


 本来の持ち主である店主には見せてもらってなかったが、仮に目の前で見たとしても分からなかっただろう。



「一度、こちらをお借りしますが、よろしいですか?」



 リブラ枢機卿の要求に、神官は肩を落として立ち上がった。その様子から、本気で勇者や魔王の情報を見つけ出そうとしていたことが伝わってくる。


 枢機卿たちが勇者たちの情報を探していて、それを神官たちが仕事として取り組んでいる以上、行われていることは正当な業務のはず。


 問題はどこに歪んだ意思が潜り込む余地があるかだろう。



「これは昼夜休まずに交代でやっているんですか?」


「はい、その通りです。現在、神殿での業務は託宣と情報収集、魔物討伐の三つを最優先で行っています。他の修繕や写本の作業も、既存の本からの見逃しがないかをチェックしながらになっていますので」



 リブラ枢機卿が神官から受け取った本を、そのままマックスに差し出す。


 マックスは笑みを浮かべて、早速、本を開くが、勇輝同様に渋い顔になる。



「もう一つの本は、キリの良いところが終わるまでお待ちください。それまでは、あちらでこの本を確認していただければ……」


「俺たちは、解読屋でも骨董品屋でもないぞ」



 ウッドもマックスの肩越しに本を覗き込み、頬を引き攣らせる。


 戦うための魔法は覚えていても、わざわざ読めない文字を読み取る魔法など習得している者は稀だろう。



「もしかするとエトナ様が何か思い出されるかもしれません。或いは、そういった能力をお持ちだとか」


「悪いな。生憎と俺様は戦闘魔法しか覚えてねぇんだ。そういうのは、アンタらや一部のエルフの得意な分野だろ。それごダメなら諦めるんだな」



 聖剣からも良い返事は貰えない。残念ながら二冊目の方は、役に立たない紙束として認識されている。


 だからこそ、勇輝は裏切り者の裏をかくならここがチャンスだと認識していた。


 まだ、目の前の本は宝箱の状態だ。ただ誰も開けたことがなく、中身が何かもわからない。


 中が何の役にも立たない可能性もあるだろう。だが、もしも重要な情報があれば、そこから裏切り者や魔王の痛いところをつくことに繋げられる。


 ――ローリスク、ハイリターン。


 失うものは時間だけ。あとは神殿内の信頼度が落ちることも予想されるが、そこは必要経費と割り切るしかない。


 勇輝たちはリブラ枢機卿から離れて、部屋の隅の机で本を開いた。どのページを見ても大して変わらない。



「こいつはお手上げだな。まぁ、こっちは俺たちが見るから、お前はもう一冊の方へ行ってこいよ」



 最後のページまでめくり終えると、ウッドはマックスの背を押した。


「勇輝から聞いたけど、二代目の勇者がカルディアの街を出るところが記されているんだって? 個人的には、すごい気になるんだよね」



 遠足を控えた子供のように、キラキラとした瞳で作業場に戻っていくマックス。その背を見送ったウッドは、声を潜めて勇輝に問いかける。



「おい。これで良いんだよな?」


「はい。聖剣も何かを隠しているのは確かなはずです。裏切り者ではないですが、味方にも思えないんですよね」



 勇輝は本を閉じて、大きく深呼吸をした。机の前には衝立状のいたがあるので、視界は遮られている。


 だが、これからやる行為を考えると気が引けるなどというものではない。


 勇輝は静かに()()()()()と、小声で呼びかけた。



「お前が言い出したことだからな。上手くやってくれよ」

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