消えた手がかりⅥ
「……やるならバレずに。もしも枢機卿が邪魔をするというのならば、結界魔法による遮断があり得るでしょう。ただし、誰が発動者かはわからないはずです」
「勇輝さんの眼ならわかるんじゃ……?」
勇輝はすぐに頷きたいが、そうもいかない。何しろ、星見の祭壇は幾重もの結界が展開されており、魔眼を用いても判別不可能。
もしも、無理矢理見破るというのならば、星神の声を聞く儀式の前から張り込み、魔法が展開される一瞬で判断する必要がある。
「初見で他人の魔法を複数の魔法の中から判別するのは難しいと思う。それよりかは結界を解除して、一瞬でも神託を得られた方が――」
そこまで発言して勇輝は、首を傾げた。星見の祭壇はあくまで声を聞きやすくするためのもの。必ずしも、祭壇ではなくても星は見える。
「あの、アルトって、星見の祭壇じゃなくても声を聞ける?」
「聞ける時もあります。ただ、ファンメル王国にいた頃は、何度か祈りを捧げている最中にお声を掛けていただいたことは何度か……」
「あえて、祭壇じゃない場所でやってみる方が邪魔が入らないんじゃないか?」
わざわざ裏切り者がいるかもしれない場所に行く必要はない。星神の声を聞くことが聖女の役目であるのならば、それを指定した星神が必要な時に声を掛けないはずがない。
だが、ソフィアは首を横に振る。
「残念ですが、アルト様にそのような自由はありません。儀式の時間までは、余程のことがない限り外出が禁じられていますので、私が傍に控えていても門番が止めに入ることでしょう」
拳を握り、震わせるソフィア。それは怒りから来るものなのか、骨の軋む音が聞こえてきそうな圧を感じた。周囲もそれを感じ取ったのか、表情は暗い。
しかし、勇輝だけは余裕の笑みを浮かべていた。
「なるほど。じゃあ、少なくとも、俺たちがここに来てから、外で試したことはないってことでいいんだよな」
「……まるで、アルト様を外に連れ出せるような雰囲気を漂わせていますが、そう簡単に誤魔化せるとは思わないでください」
『いや、人間だから完璧な見張りなんて存在しないし、案外そう思っているところほど簡単に行けるもんだ――』
聖剣が横槍を入れるが、殺気の籠った視線を受けると唐突に思念が途絶える。
「聖剣の言う通りだ。みんな完璧だと思い込んでいるだけで、いくらでも隙はある。後はそこを突く手段があるかどうかさ」
勇輝はすぐ横にいた桜へと視線を移す。
当然、桜は自分がその「手段」として選ばれるとは思っていなかったようで慌て始めた。マックスたちは勇輝の考えた策が気になるようで、じっと次の言葉が紡がれるのを待っている。
「一度、思いこんだら、人はその考えを捨てることができない。そこを利用してやるんだ。後は、アルトが俺の作戦とここにいるメンバーを信じてくれるかどうかで決まる」
アルトは勇輝の言葉を受けて、周囲を見回した。
桜とソフィアは不安気な表情を浮かべ、マックスたちはレナ以外が楽し気に微笑んでいる。そして、勇輝は緊張と期待が入り混じった複雑な顔のまま固まっていた。
「……そこまで言われたら、作戦に乗るしかないじゃないですか。もしかして、意地悪なタイプですか? 桜さんに嫌われますよ?」
「それは困るな。次からは気を付ける」
「なるほど、意地悪であることは否定しない、と。桜さん、婚約解消するなら今の内ですよ」
批難の声を静かに上げるアルトに、桜は一瞬だけ勇輝を見た後、苦笑いを浮かべる。
「ごめんなさい。それよりも良い所をたくさん知ってるから、選択肢には入らないかな……」
「まさか、惚気られるとは思いませんでした。これが、愛の力?」
わざとらしく、額に手を当ててよろめくような仕草をするアルト。その傍らでソフィアが口を開く。
その瞳には打って変わって、強い意思が感じられた。
「アルト様もやると決心された以上、時間を無駄にはできません。作戦内容の提示をしてください。改善できるところは徹底的にするべきでしょう」
「わかりました。じゃあ、説明すると、まずは二手に分かれて――」
勇輝の作戦提示に、十人十色の反応が返って来る。その中に否定的なものは、ほとんどなかったのは勇輝自身、想定外だったと言えた。
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