消えた手がかりⅤ
勇輝の案を聞いて、ソフィアはあからさまに不機嫌な表情を浮かべた。それもそのはずで、勇輝の案というのは、別の見方をするとアルトが無能であると言っている形になるからだ。
護衛や同じ国の人間であるという前に、長年、共に過ごしてきた者としては看過できない部分があったのだろう。
「ソフィア、良いんですよ。事実、私は自らの存在価値を示せていないのですから」
アルトは毅然とした様子を見せながら、勇輝を真正面から見据える。
逆に作戦を提案した勇輝の方が、苦しげな表情を浮かべてしまう。
「星神様の声を妨害されている可能性は、確かに見落としていました。そのようなことをする者が、星見の祭壇にいるとは考えたこともありませんでしたから」
「逆に言えば、それを邪魔している人物がいるのであれば、明らかな裏切り者だ。そいつをふんじばって捕まえちまえば、こっちのもんだ。それで星神様とやらの声が聞ければ、他の裏切り者もわかるかもしれんな」
ウッドが拳を掌に叩きつける。
ただ問題は裏切り者がいたら、それはそれで問題になる。当然、サケルラクリマ内に他の危険人物が入り込んでいる可能性があるし、今後もその脅威に怯え続けなければならない。
何より、今まで味方だと思っていた人物に裏切られたという精神的ダメージは計り知れないだろう。
「もし、それが通用しなかった。つまり、裏切り者が見つからなかったら、どうするつもり?」
「それは俺も悩んでたんです。ただ、ちょっと奥の手があるって言う知り合いがいまして……」
レナの質問に勇輝は意識を腰に向ける。そこには相変わらず黙ったままの心刀がいた。星神との交信の失敗や推測が外れていた時の保険として、代案があるというのだが、その内容はまだ教えてもらっていない。
「意外だな。こっちの国に知り合いがいたのか。ついこの間まで、自分がどこから来たのかわかっていなかったみたいだったのに」
マックスが首を傾げ、他のメンバーも頷く姿に、勇輝は冷や汗が流れ落ちる。桜には事情を離しているが、異世界からの来訪者であることは、未だにトップシークレットだ。安易に話せるものではない。
「まずは二冊の本から確かめに行って、無くなっているなら捜索。そのままなら、他の怪しい所を調べて見るのはどうでしょう? いきなり、大舞台で仕掛けるのは危険だと思うから」
リシアは大きな杖の持ち手を擦りながら呟く。しかし、怪しい所といわれても、他に手掛かりは思い浮かばない。
「何か、お二人が考えつくこととかありますか?」
「何かって言われましても……レオ枢機卿の当たりが強いとか、それくらいですかね……」
アルトの視線がソフィアへと向けられる。
当然、ソフィアも困惑の表情を浮かべている。聖女ですら言いにくい内容なのに、それを求められるのはいい迷惑だろう。
ただ、世界の危機という大義名分があるためか、ソフィアは何とか今までのことを思い出しているようで小さく唸り声を上げる。
しばらくして、目を軽く見開いたソフィアは全員を見回る。
「十二人の枢機卿は基本的に平等な権限を持っています。ただし、その役割上、一人だけ特殊な権限が与えられている方がいます」
「……ソフィア、まさか!?」
「私も考えたくはありませんが、組織立って何かをするとなると、やはり力がある人物の方が動きやすいのは事実です」
覚悟が決まったのか、驚くアルトをよそにきっぱりと言い切った。
「平等な視点を以て枢機卿を纏める役を担った枢機卿。天秤の名を冠する枢機卿には、議決が分かれた際に折衷案を提示できます。つまり、上手くやれば自分の意見を潜り込ませることも可能です」
一番信頼できそうな人物の名が出てきたことに、部屋の中の緊張感が一気に高まる。
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