消えた手がかりⅣ
アルトたちが帰って来る頃を見計らい、神殿の入り口で待ち構えていた勇輝たち。計画通りに声を掛けて、マックスの部屋に集まることに成功した。
「――情報の収集が嘘の可能性、ですか」
勇輝と桜で交互に話しながら、明らかに勇者と魔王の情報が消されていることやサケルラクリマの中に裏切り者がいる可能性を伝えた。
最初は訝し気な表情で聞いていたアルトたちだったが、次第に目に剣呑な光が宿り始める。
「ファンメル王国でも把握していることは多くない。俺が書物で読んだものの中にも、魔王のことは簡潔に書かれていただけだ。まるで、火山が噴火した程度のことだとでもいわんばかりに」
「……口伝で語り継がれていることはあるかもしれないな。だけど、そういった話は聞いたことがねぇ。何しろ、俺の爺ちゃんが生きていた時よりも前の話だからな」
マックスがウッドに視線を送るも、彼もまた同じだと首を振る。そうなってくると、一番寿命が長い種族――すなわちエルフであるレナへと視線が集中する。
「私はエルフだけど、生きていた期間はあなたたちと同程度。それは知ってるはず」
「そうだけどよ。お前の両親や爺ちゃん、婆ちゃんは別だろ? 少なくとも、俺たちのよりは長生きしてるはずだ」
ウッドの追及にレナはため息を付く。しかし、勇輝やアルトたちの視線に耐え切れなくなったのか、顔を逸らした。
それが余計に何かを知っているように思えて、勇輝はさらに穴が開くように見つめる。そんなことをしていれば、罵倒の一つでもレナから飛んで来るだろうが、それにも屈しない覚悟だ。
「……確かに、私の村の中には魔王が復活した時に生きていた人もいる。当然、存命中。でも、私の村は魔王と直接どうこうしたことはないと聞いた。精々が、普段より多くなった魔物を狩っていたくらいのはず」
エルフと言えば森の中で誰にも知られず、ひっそりと生きているイメージがある。もしかすると、魔法を用いて場所が分からなくなるようにしているのかもしれない。
その推測が当たっているかどうかは別として、魔王とそもそもの接点が無ければ知ること自体不可能だ。
「……お二人が回収したという二冊の本。確か、リブラ枢機卿が受け取ったんでしたっけ?」
「そ、そうだけど……何かマズかった? 私、一番信頼できる人だと思ってたんだけど……」
桜が不安そうに尋ねると、アルトは微笑んだ。桜の判断は決して間違っていない、と。
「どんなことがあろうとも、リブラの名を冠した枢機卿が裏切ることなどあり得ません」
自信満々で言い放つアルト。その瞳には、全幅の信頼を置いていると言わんばかりに、天井の魔法石の光が煌めいていた。
「――ですが、勇輝さんたちの不安も理解できます。ここはその本を闇に葬ろうとする者がいるか警戒する価値があるでしょう」
『……おいおい、黙って聞いていたけど、もうすぐ俺様たちは旅に出るかもしれないんだぞ。そんなことに時間を割く暇があるのか?』
我慢ならん、と聖剣が唐突に声を上げた。
勇輝は確かに、と納得しかけたが、珍しいことにソフィアが前に進み出る。
「暇があるかじゃなくて、価値があるかの間違いでしょう。聖剣であるあなた様が、しっかりと語ってくださるなら、このような心配をせずに済むのですよ?」
仁王立ちして見下ろす様は、かなりの威圧感があり、聖剣を腰に帯びているマックスの顔が引きつっている。試練のダンジョンで死闘を繰り広げた勇者とは思えない。
マックスの恐怖が伝染したのかは不明だが、聖剣の声も心なしか震えているようであった。
『お、俺様は別に、必要なことを言ってるだけで、何かを隠しているわけじゃないからな』
「トレントのことを忘れていたのに、ですか?」
『わ、忘れていたのと、隠しているかは違うだろう……』
聖剣の言い分もわからないわけではないが、尻蕾になっていく語気からして、どちらに軍配が上がったかは一目瞭然だった。
「黒騎士隊長として、聖女であるアルト様の命を守るのが最優先事項です。それを侵すというのならば、聖剣といえども容赦はしない、と心得ておいてください」
『お、おう。しっかりと、心に刻んでおいたぜ……』
言い合いの完全決着となり、勇輝は立ち上がった。
話し合った結果、大きな進展はない。だからこそ、ここで勇輝が考えた切り札を共有し、意見を仰ごうと判断した。
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