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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
白銀の聖剣と漆黒の聖鞘

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勇者の記録Ⅰ

 店主の持つ資料を神殿に届けると、珍しいことにリブラ枢機卿が神殿騎士を引き連れて現れた。



「わざわざ来ていただきありがとうございます。何やら勇者に関する書物を見つけたとか?」


「その通りでございます。十数年ほど前に倉庫の奥から、ひょっこりと古びた箱がでてきまして……」



 店主が二冊の本を差し出すと、リブラ枢機卿はその内の一冊を手に取った。


 開かずに表紙と裏表紙を眺めていたリブラ枢機卿だが、少しずつ目を細めていく。



「……中を拝見しても?」


「もちろんでございます」



 店主の返事にリブラ枢機卿は、宝箱を開けるように表紙をめくった。わずかについていた埃が、ハラリと空中を舞い落ちる。



「これは――内容を見るに二代目勇者のことでしょうか?」


「はい。その通りでございます。今夏に開かれる石像のコンテストに、序盤の街を出るシーンを再現した物を出そうと思っておりまして、枢機卿の方々も、きっと驚かれるかと」



 興奮した様子で店主がまくし立てると、リブラ枢機卿は途中を飛ばして、最後のページ辺りを入念に読み進める。


 しばらくして、神殿騎士が持ってきた赤い布が敷かれたトレーに本を丁寧に置いた。続けて二冊目も同じように観察した後、中を見て、眉をしかめる。



「中があまり読めませんね……」


「そちらは保存状態が悪かったようで、儂も読めなかったのです。ただ、神官の中には、そういった物でも解読できる方もいると聞きます。儂には不要ですが、後世のために、神殿で活用していただけるなら、寄贈しようと思っております」



 店主が告げると、リブラ枢機卿は目を丸くした。


 二冊目もトレーに置き、店主の顔の位置に自らも屈んで、視線を合わせる。



「よろしいのですか? あなたの御先祖様が記した貴重な本なのですよ?」


「構いません。儂は十分読ませていただきました。後は、この国の民に、皆様の手で広げていただければ本望です」



 きっぱりと店主が言い切ると、リブラ枢機卿は一歩下がる。逡巡した様子で、困った表情を浮かべた。


 数秒の沈黙の後、リブラ枢機卿は頷いた。



「わかりました。この二冊は責任をもって神殿が預かります。あなたの後世を思う気持ちとそれを残した御先祖様に、枢機卿を代表して感謝申し上げます。末永く星神様の御加護がありますように」


「ありがたや、ありがたや。お役に立てたようであれば、何よりです」



 店主が指を組んで祈りの仕草を行う。リブラ枢機卿は小さく頷くと、後ろに控えていた勇輝と桜に視線を移した。


 穏やかな笑みを浮かべたまま、片手で神殿騎士へと二冊の本を運ぶように指示を出す。



「お二人もありがとうございます。聖女アルトからは、帰るまでゆっくり過ごすと聞いていたのですが……」



 いったいどのような伝え方をしたのか非常に気になる勇輝。


 まさか、デートなどとは伝えていないどろうか、と嫌な考えが脳内をよぎる。



「元々の調査とは別に協力をしていただいていたのに、本当に申し訳ありません」


「いえいえ、私たちはただ提案しただけです。ね、勇輝さん?」



 桜は両手を胸の前で振りながら、顔も横に振る。


 勇輝もその横で、桜の言葉に同意した。



「勇者の話を記録した御先祖様と、それを守り続けてきた方々の成果ですよ」


「そうですか。しかし、それで良しとするわけにはいきません。何か私たちにできることがあれば、気兼ねなく言ってください。協力は惜しみませんので」



 勇輝たちだけでなく、店主にも同様に伝えると、リブラ枢機卿は一呼吸おいて三人を見回した。



「この後はどうされますか?」


「お爺さんが、この後もお店を続けるらしいので送っていこうかと」


「わかりました。今日は海から吹く風が冷たいですので、体調を崩さないようお気をつけて」



 リブラ枢機卿は再度感謝を告げると、勇輝たちが神殿を出ていくまで、その場で見送ってくれた。

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