うっかりな聖剣エトナさんⅥ
リシアは杖を反転させて、勇気から距離を取る。
「じゃあ、ここからは全力で。私はあっちを見張っておくから、反対側は二人に任せるね」
リシアが指定したのは街から北に向かって直線を引いた時の西側。ちょうど、桜が寄ってきていたので区分けを話し合う。
「北に行けば行くほど助けが来ない可能性が高い。遠近両方で対応できる俺がより遠い方に向かうでいいか?」
「うん。でも、無理はしないでね。勇輝さんって、目を離すといつも危ない目に遭うんだから」
「ははっ。それは俺も好きで巻き込まれているわけじゃないんだけどな。そこは善処する。ダメそうなら空にガンドでも撃ち上げてみるよ」
「その時は私が真っ先に駆け付けるね」
箒ですれ違いざまに耳元で桜は呟くと、そのまま通り過ぎて高度を上げていく。あまりにも近過ぎて、唇が耳に触れるかという距離だったせいか、勇輝は顔が赤くなるのを感じた。
右手で自らの頬に触れると表面は冷たいが、その皮膚の下にはマグマが流れているのではないかと思う程に血の巡りを感じ取る。
「……まだ、こういうのは慣れないな」
照れくさくなって後頭部を掻いていると、下から白く発光する物体が空に向けて放たれた。
光魔法による閃光弾が、勇輝の隣を抜けたかと思うと、天高く昇り続け――弾けた。
数秒遅れて、花火のような爆発音が響き渡る。上空には白い球体の状態の光がゆっくりと落ちてきており、木の枝が邪魔さえしなければ、かなり遠くからでも見つけることができるだろう。
「――来た!」
閃光弾が上がってから十秒ほどすると、次々に他の色の閃光弾が上がり始める。最初の閃光弾と違い色とりどりの閃光弾が上がっている。
緑――問題なし。
黄――敵を発見中。
赤――現在、交戦中。
主にその三種類の意味が用いられている。勇輝は即座に北東側へと駆けた。赤い閃光弾が上がったところを経由し、ガンドで援護する。
通り抜け様にガンドを二連撃。一撃目が幹の表面で弾け、その衝撃を貫いて二撃目がトレントの本体へと突き刺さる。
幹が半ばから折れ、倒れ行くトレントが最後の足掻きに勇輝へと枝を振るうが、その頃には勇輝の姿は消えていた。
倒し方を説明したいところだが、当分は彼らがトレントと遭遇しないことは魔眼で確認済みだ。地上に降りて説明するよりも先に、さらに遠く離れた部隊の元へと急ぐ方が大切だろう。
一歩踏み出すごとに魔力を爆発させて加速する。森の中では一本一本が離れて生えている樹木であっても、高速で走っていればぶつかる可能性がある。
その点、空中には衝突するものがない。魔眼で警戒しなくても安心して走ることができる。結果として、最も遠くに上がった閃光弾の所に辿り着くまで一分と掛からなかった。
そこで上がった閃光弾の色は黄色。勇輝は速度を落として、手前の部分で降下を始める。すぐに魔眼が人の存在を感知したので、勇輝は声を掛けた。
「すいません! ファンメル王国から依頼を受けてきている者ですが――」
白銀の鎧。恐らくは神殿騎士の部隊だろう。先頭で警戒していた騎士たち以外が振り返ると、最も後ろの騎士が歩み寄って来た。
他のメンバーよりも年配な容姿からするに、部隊のリーダーだと推測できる。
「おぉ、誰かと思ったら、ゴブリンの大群が押し寄せて来た時に空中を駆けていた君か。あの閃光弾の後ということは、何かの伝令か?」
「はい。トレントの攻略方法がわかったので、知らせに来ました」
「ありがたい。ちょうど、奴がどこかからの攻撃を受けて動き出したところを見つけてな。周囲の木を叩き折るほどの暴れ具合だったから、攻めあぐねていたんだ」
下手に攻撃を加える前に声をかけられたことに安堵した勇輝は、胸をなでおろす。
トレントに気付かれないように神殿騎士たちの近くまで寄ると、トレントの特性とその攻略法を伝える。それを聞いた神殿騎士たちは、大きく目を見開いた。
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