うっかりな聖剣エトナさんⅦ
「何と、そんな方法で倒せたのか!?」
「いや、待て。黒騎士隊長だからこそできた芸当ではないのか? 流石の我々も本気になった彼女の動きには一歩劣るぞ」
希望に満ちた表情を浮かべる者とあくまで慎重になる者。それぞれの意見が小さな声で飛び交う。
提示された情報を鵜吞みにせず、冷静であろうとする人がいることは部隊として優秀と言えるだろう。
「安心してください。ソフィアさん曰く、『適切な量の風の刃と彼らの普段通りの加速が出来れば、十分に幹まで辿り着くことができる』とのことです」
所属が違うとはいえ、聖女護衛の最高責任者にできるはずだと言われては、流石に引き下がるわけにもいかないようだ。
神殿騎士たちは表情を引き締めて、敵を捜索して彷徨うトレントに視線を向ける。
「わかった。こちらは我々だけで十分だ。まだ他の部隊が、状況を把握していないはず。そちらへ説明に向かってくれ」
「わかりました。ご武運を!」
勇輝は頷くと、踵を返す。静かにその場を離れ、ある程度の距離を稼いだところで空へと跳びあがった。
空には閃光弾がまだ浮遊しており、その中にはまだ勇輝が向かわなかった場所も存在している。桜が向かう空域ではなく、事前に勇輝の場所と決めた空域に存在している為、急いで加速する。
「なっ!?」
思わず勇輝は声を上げた。ちょうど、向かおうとした閃光弾の真横にもう一つ閃光弾が上がったからだ。しかも、その色は赤。
日ノ本国にいた時にも信号弾を撃ち上げる道具があり、複数上がる場合は、特に緊急性の高い事件として認識されると聞いていた。
『おいおい、もしかして、部隊が壊滅状態なんじゃないか?』
「くっ、視認が出る前に間に合って見せる!」
魔眼でトレントとの距離を警戒しつつ、現場に急行する。距離にして二百メートルほどのきょりだったが、勇気には、そこに辿り着くまでが途方もなく遠くに感じた。
突き出た枝葉を気にせず、飛行機の着陸のように斜めに地面へと突っ込んでいく。減速を最小限にして体を捻り、わずかな隙間を縫って着地した勇輝は、目の前の光景に絶句した。
神殿騎士たちが、トレントの枝の猛攻の中で立ち竦んでいた。幸い、倒れている者は近くにいない。皆、魔力を鎧に流し込んで、防御力の底上げをしているのだろう。
想像するにその状態で突撃したは良いものの、前にも後ろにも進めなくなってしまったようだ。
「すぐ助けます!」
勇輝がガンドを放つ。しかし、縦横無尽に振り回される枝に数本ぶつかり、軌道が逸れてしまった。
思い通りにいかず舌打ちした勇輝は、今度は三発同時にガンドを放つ。
ほぼ同じ軌道でトレントに突き進むガンド。それでもなお、振るわれる枝が多すぎてガンドがあらぬ方へと飛んでいく。
「こうなったら、一度回り込んで攻撃するしかないか?」
そう思って足を踏み出しかけた瞬間、前方から金属音が響きながら近付いてきた。
目の前に刺さったのは折れた剣。枝の当たり所が悪かったらしく、綺麗に一直線の断面が見える切っ先が地面に突き刺さっていた。
神殿騎士たちを見れば、彼らの纏う光は弱くなっており、鎧もあちこちがへこみ始めている。
このまま回り込めば、確実に二撃で仕留められる。だが、その間に死人が出てもおかしくない。勇輝は己の残存魔力を確認し、覚悟を決めた。
「――魔力制御・最大解放」
まずは神殿騎士たちを安全な所にまで誘導することが最優先。一気に踏み込んだ勇輝は、彼らに次々に迫る無数の枝を心刀で切り裂いていく。
刃に接触して、枝がしなる間もなく切断されて空中を舞う。右左と忙しなく動き回り、時に真上から叩き落される一撃はガンドで弾き飛ばす。
加速する思考。或いは止まった世界。その中で幹を狙おうとするも、ガンドの残弾は二発。万が一のことを考えると、迂闊に使う訳にはいかなかった。
【読者の皆様へのお願い】
・この作品が少しでも面白いと思った。
・続きが気になる!
・気に入った
以上のような感想をもっていただけたら、
後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。
また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。
今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。




