うっかりな聖剣エトナさんⅡ
あらかじめ伐採すべき樹木が分かっているならば対処できた。
少なくとも、トレントになる前の状態かを判別できれば、今後の聖剣の解放以外の場面でも利用できる。
「今は目の前のことを何とかすることで精いっぱいってところだな。奇襲は受けないように――って、あそこにトレントっぽいのがいるな」
勇輝の魔眼が異様な色を捉えた。
以前、見た時は緑色の光が大半だったが、今の勇輝には赤紫色の光が見えている。もう数か月早ければ紅葉のようで綺麗だと目を奪われていたかもしれないが、すぐに勇輝は周囲にそれを知らせる。
距離は五十メートルほどで、進行方向からややズレた場所にいる。他の対応部隊はまっすぐに進んで行ったが故に見逃された個体だろう。
「大きいな……。流石に矢では対応が難しいか」
レナが矢を番えようとするも、すぐにその手を緩める。それも当然で、勇輝が指摘した樹木は、あまりにも巨大だった。鏃が食い込んだところでほとんどダメージにはならないだろう。
「火属性魔法で対処したいところだけど、周囲に燃え移らないかが心配かな。一応、水属性魔法は使えるけど、広まった時のことを考えると難しいから、ここは斬撃や風属性魔法で何とかするしかないっぽいね」
リシアがマックスの持つ聖剣へと視線を移す。
風属性魔法を放つことができる聖剣。本体自身も相当な切れ味であることを考えると、接近戦に持ち込んでも問題はない。しかし、聖剣自身は魔法で遠距離から攻撃することにこだわっていた。
『おい、いいか? あの大きさのトレントになると、木の枝の一撃だけで腕の骨が折れるくらいの威力がある。攻撃範囲に入らないように気を付けろ。どうしても入るなら、幹に触れるくらいまで近付け。そうすれば威力も減衰するからな』
この場合の腕の骨が折れるというのは、身体強化を施していても、という意味だろう。それがどれだけの威力なのかを想像して勇輝は顔を急いで横に振った。
身体強化無しで近付いた自分の体が上と下に分断される未来しか出てこない。
「それはそうですが、時間も惜しいです。手っ取り早く倒せるのなら、それが一番ですから――勇輝さん!」
「え、俺!?」
アルトからの急な指名に、勇輝の口から出したことのない音が漏れる。
「ここからだと大体の場所はわかりますけど、それを把握できるのは勇輝さんとエトナ様だけです。まずは一発、アレをお見舞いすればトレントも動き出すと思うので、それを見て私たちも攻撃します!」
そう告げたアルトは、勇輝がガンドを撃つ時の手の指の形を真似ていた。
遠距離から気に紛れていても確実に狙い撃てる。そして、確実にダメージを与えられる攻撃。魔眼とガンドの組み合わせは、よくよく考えると敵の立場から考えれば、やりにくいことこの上ないはずだ。
「じゃあ、一度前に出ます。急に射線上に出てこないでくださいね」
足に力を入れて、前へと飛び出す。先頭に立った勇輝は、立ったまま人差し指をトレントの方へと向けた。
狙うは幹のど真ん中。願わくば、そのまま折れてしまい、一度も攻撃動作をさせることなく倒しきってしまいたい。
「くらえっ!」
一発。
瞬時に指先へと集まった魔力の塊は、青い煌めきを軌跡として残し、空を駆けた。一拍置いて、トレントの幹が弾け飛ぶ。
籠めた魔力はわずかとはいえ、結界や城壁を穿つレベルの威力だ。当然、トレントの幹にも大穴を――
「効いて、ない!?」
樹皮は剥がれていたが、その下の部分は健在だ。多少抉れている部分がないわけではないが、すぐに植物が枯死したり、折れたりするほどかと言われると自信が無くなるほど。
二射目を放とうとして、勇輝はトレントと思われている樹木がわずかに震えるのが見えた。
次の瞬間、魔眼は赤紫色の光の壁が勇輝たちとトレントの間に出現する瞬間を認識して、顔を蒼褪めさせた。
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