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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
白銀の聖剣と漆黒の聖鞘

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うっかりな聖剣エトナさんⅠ

 聖剣の安置されていた森は、巨大な樹木が数え切れないほど植わっている。


 人が十人いても囲み切れない幹の太さのものもあれば、天に届くのではないかと勘違いしてしまう程の高いものも存在していた。


 トレントは木が魔物化した存在だが、普通の木ですら脅威になるというのに、その何倍もの大きさの個体が出現したという。それも一体や二体の騒ぎではない。



「なるほど。俺たちに判別はできないけど、魔力にも良し悪しがあって、今回はその悪い魔力がエトナを抜いたことで一気に活性化した、と」



 マックスが走りながら呆れ果てる。


 彼の部屋で変な声で呻いた聖剣を問い詰めたところ。この現象に関しては、抜かれた時点で対処できるものだったらしい。本来ならば、風の魔法でトレントになるはずの樹木を先に傷つけておくことで、魔物化を防ぐこともできた。


 つまるところ、抜かれるまでの百数十年の間に、肝心なことを忘れてしまっていたらしい。



「おい、次にこんなことやったら、お前の横っ腹に『私は物忘れをしやすいダメな聖剣です』って彫ってやるからな」


『か、勘弁してくれ。俺様にだって、失敗の一つや二つくらいすることはあるんだ』



 ウッドがその横を並走し、文句を垂れる。


 強気な聖剣も、流石に自身の失態は認めざるを得ないらしく、返答に覇気が籠っていなかった。



「何か、人間みたいだよね。聖剣さん」


「人間と一緒にいたから人間みたいになったのか。元になった人格があるのか。どっちにしても、興味深いな。まぁ、こんな緊急事態じゃなければ、そのことを聞くこともできたかもしれないんだけどさ」



 勇輝と桜も、マックスたちのパーティーの後ろを走りながら、トレントの出現が報告された場所へと急ぐ。街の外へと向かう外壁の門の近くまで辿り着くと、そこには既にアルトとソフィア、数名の黒騎士たちが待っていた。



「申し訳ありません。みなさんにまでトレントの駆除をお願いすることになってしまって」


「良いんだよ。元はと言えばコイツの責任なんだから。それに、マックスも勇者として力を奮ういい練習もできるからな。それより、聖女さんよ。今は時間が惜しい。道案内を頼めるか?」


「もちろんです!」



 踵を返し、駆け始めたアルトの後に続く。


 少し視線を上に向ければ、そこには冬でも青々と茂る葉が目に飛び込んでくる。肉眼ではトレントかどうかをすぐに見分ける方法は多くない。


 それ故に、即座に判断できるのは勇輝の魔眼だけだろう。



「数は、どれくらいいるんですか?」



 リシアから質問が飛ぶと、ソフィアが声を張り上げて答える。結界の反応からして、最低でも三十体以上は存在する、と。


 問題は動いている個体はすぐわかるが、木に擬態したまま動かない個体はわかりにくいこと。


 勇輝と桜は表情を引き攣らせる。


 以前、魔法学園のダンジョンでトレントに追われたことがあったが、その時には今よりも戦闘技術が未熟だったとはいえ、相当苦戦した。一歩間違えればパーティーが全滅していた可能性すらあったほどに。


 今ではかなり成長したと二人は思っているが、同時にトレントの規模自体も大きいという。その大きさ次第だが、少なくとも周囲の樹木から推定するに、油断しなくても命を落としかねないことは明らかだ。



「……他の戦力は? 神殿騎士は黒騎士よりも多くいたはず」


「既に対処に向かっています。ただ、この中でトレントを見つけ出そうとすると難しくて……」



 レナも同様に質問を飛ばすと、今度はアルトが答えた。



『ちっ、抜いたばかりならヤバそうな奴の位置もすぐに分かったんだけどな。俺様でもこうなったら地道に探すしかできないぞ』


「ちなみに聞いておくけどさ。どうやって見つけてるんだ? お前に目なんてついてるようには見えないけど」


『ちょっとばかり妖精さんに聞いてみるんだよ。ヤバそうな奴はいないかってな。あとは他の動物たちを避難してもらって、俺様の魔法でそこの樹木だけ切っちまうって方法だ』



 妖精、と聞いて真っ先に思い浮かぶのは妖精庭園。そこでは長く生きた妖精がリーダーとして君臨する妖精と植物たちの国が広がっていた。


 確かに、植物に異変があるのなら妖精が気付かないはずがない。ただ驚くべきは、その妖精と意思疎通ができる能力を聖剣が有していることだろう。

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