勇者マックスの誕生Ⅶ
『ま、再封印となろうが、消滅となろうが俺のすることは変わらない。ただ、本当に消滅させるとなるなら、その役目は俺じゃないだろうな』
聖剣はあくまで自分は封印の為の存在だと言い切る。
それは即ち、ファンメル王国が考えている理想の未来を手に入れる計画には適していないということだ。当然、それは皇太子であるマックスによって却下されることになる。
「そうは行くか。封印の力じゃなくても、大規模な魔法行使だけで十分に心強い味方だ。存分に役立ってもらうぞ」
『まったく、聖剣使いの荒い御主人様なことで……』
ため息交じりに呟く聖剣。
その声音は、他の言葉を放つ時よりも人間臭さがあり、過去に同じような苦労をしていたのだろうと感じさせるものがあった。もしかすると、過去の勇者もマックスみたいに無茶振りをする人物が多かったのかもしれない。
「それで、仮に枢機卿たちが勇者として旅に出ることを許可したとして、次にどこに行くつもりなんだ?」
「まずはファンメル王国に戻る必要がある。何せ、父さ――国王陛下には無事、勇者になってしまったことを伝えておかないと」
「なってしまった、か。国王様の計画に乗った時点で、なるつもりだったんじゃねえかよ」
ウッドは肩を竦める。
元々、彼らはマックスが皇太子であることも知っていた。それならば、マックスの旅の目的が何なのかを知っていたとしても不思議ではない。
「……そう言えば、俺たちも魔法学園が始まるから、そろそろ戻らないといけないな」
「冬休みももう終わりだものね。ローレンス領で起きた事件のせいで授業が遅れてるから頑張らないと」
いま置かれている状況もなかなかハードではあるが、魔法学園の再開というのも結構、大変なカリキュラムになりそうなことが予想できる。留学生として通っている桜としては、期末試験も控えているので、魔王関連のことに首を突っ込んでばかりいられない。
ただ、桜は優秀な部類に入るので、そこまで根を詰めなくても良い。本人曰く、「最初の一週間さえ乗り越えれば授業に慣れる」とのことだ。
「えっと、もしかして、マックスさんたちもアメリアさんの転移魔法で買える予定ですか?」
「あぁ、当初の予定だとね。だけど、この感じだと、もう少しだけ延長になりそうだ。その時は勇輝に伝言をお願いしようかな。『悪いけど、また数日後に迎えをよろしく』って」
「そんな気軽に――って、そうか。マックスさんが皇太子ってことは、アメリアさんは妹になるのか」
「おう。美人で、頭も良くて、魔法もピカイチ。自慢の妹だ。そこらの男には嫁に行かせるもんか」
拳を握ったマックスは、まるで父親のように力説する。アメリアの伴侶になる者は、相当高い壁を乗り越える覚悟が必要らしい。
勇輝が苦笑いしていると、じっと見つめて来るウッドと目が合った。
「そういや、ずっと気になってたんだがよ。そこの嬢ちゃんとはどこまで進んでるんだ?」
まさか自分に話が回って来るとは思っておらず、顔が鼓動と共にだんだん熱くなっていく。
レナがウッドの横腹に爪先で蹴りを入れているのが視界に入ったが、それを脳が認識する余裕がなかった。それでも、一瞬、桜と目が合った勇輝は、意を決して正直に話すことにした。
「実は先月に婚約をしまして……」
「婚約ぅ!?」
その言葉に同時に反応したのは、マックスとウッドだった。その背後で、リシアも目を輝かせていたのだが、影になって勇輝からは見えなかった。
勢いよく目を見開いた二人は、勇輝に詰め寄ると肩やら腕やらを掴んで前後に揺すり始める。
「そういう大切なことは早く教えてくれ。祝いの言葉の一つも言えなかったじゃないか!」
「おいおい、奥手だと思ってたが、やる時はやるもんだなぁ、オイ! 見直したぜ!」
式はいつだ。指輪は買ったのか。
そんな話が次々にぶつけられ、勇輝は目を回しそうになる。恋バナは女性がよくするものだと思っていたが、男でもあまり変わりはないらしい。
どう答えたものかと悩んでいると、廊下から複数の――しかも、割と大きな音を立てて近付いて来る足音が聞えて来た。途端にマックスたちの動きが止まり、目が据わる。
部屋の前で足音が止まると、女性の声が扉越しに、耳へ届いた。
「――申し訳ありません。至急、お知らせしたいことがあって参りました。マックス様とウッド様はいらっしゃいますか?」
「あぁ、中にいるが、どうしたんだい?」
マックスが部屋の中から声を張り上げると、一拍置いて、同じ声が答える。
「聖剣の安置されていた森で、多数のトレントが出現し、暴れています。聖剣エトナ様のお知恵をお借りしたいのですが――」
『――――あ゛っ』
明らかに何かをやらかした時の反応。部屋の中にいた全員の視線がマックスの腰へと集中した。
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