勇者マックスの誕生Ⅵ
問題になって来るのは、マックスがどれだけの国に訪れているか。
既にエルフであるレナがいることから、エルフとの交渉は進んでいるはず。そうなってくると――
「あ、そういえば、俺って、この大陸にある国のこと、何も知らないんだった……」
「勇輝さんとお話ししている時に出てくる国って、そんなに多く無いかも。周りにいる人の出身国の話くらいじゃないかな?」
ファンメル王国や聖教国サケルラクリマは当然として、日ノ本国と蓮華帝国もよく話題に上がる。しかし、それ以上の国の名前はほとんどしたことがなかったはずだ。
「まぁ、国って言っても実際は国の体を成していなかったり、あっても言語体系が違ったりで大変な場所もある。実際、翻訳する魔法の適用範囲外で、会話が通じずに諦めた国もあった」
レナは肩を竦めて、マックスを睨む。
「し、仕方ないだろ。その代わり、ジェスチャーで何とか飯だけは食べさせてもらえたんだから、むしろ、感謝されるべきだ!」
「あぁ、その件に関しては尊敬すらした。恥も外聞も捨てて動く姿は滑稽ではあったけど、確実に相手には伝わっていたからね」
淡々と告げるレナに、マックスの動きが止まる。
しばしの沈黙の後、ウッドへと助けを求めるような視線を向けた。
「今の、褒められてたのか?」
「……お前がそう思うんなら、それでいいんじゃね?」
呆れた様子でウッドは肩を竦め、指を折りながら国の名前を言い始める。
「とりあえず、獣人の国。ここは種族がありすぎて国名が定まってすらいない。一応、日ノ本国が交易を盛んにしている地域で、ファンメル王国にもそれなりに出稼ぎに来ているから、関係は良好だ。次にダークエルフ族。ここは門前払いを食らった。いきなり矢が飛んで来なかっただけありがたいと思った方が良いな」
ダークエルフという名に勇輝は思わず、レナを見た。何となくではあるが、エルフ族とは仲が悪そう――何だったら、魔王側に付き従いそうなイメージがある。
「とりあえず、魔物を多く引き連れてい来ることだけは想定される。だから、戦闘に参加できる者がいれば一人でも多く取り込みたいというのが、国王様――つまり、こいつの父親の考えなんだとよ」
「敵が魔物の群れならば、質にもばらつきがある。そうなった時には一人でも多く戦える者がいるだけで生存率が変わるはず。それはお前もわかってるだろ?」
「俺としちゃあ、何かしらの不和が原因で内側から崩壊しないか心配で仕方がないぜ」
代案は持ってないけどな、と付け加えた上でウッドは笑う。だが、それは国王が未来のことを考えて動いているからできることであることを勇輝は理解していた。
もしも無能な者が玉座に居座り、魔王対策を一切していなかったら、簡単に滅びてしまうのは自明の理である。
『なるほど、魔王の完全消滅とは恐れ入った。どうやら人間ってのは、俺様の知らない内に、さらに力をつけていたらしい。こいつは封印剣と名高い俺様の出番も、近い内に無くなりそうだな』
聖剣もマックスの腰から声を上げる。その声音には喜色が混じり、剣ではなく人の姿であれば、両手を叩いていそうだ。
「その封印剣って言うのは、誰がつけたんですか? そもそも、誰が作ったのかも謎ですし」
『あぁ、そりゃあ最初の勇者に名付けられたのさ。殺し切れなかったが封印は出来た。いずれ復活するだろうことは予想できたから、そう名付けて聖剣として大切に保管すれば、また役に立つだろうってな。だが、誰に作られたかは俺にもわからん。お前さんたちが、自分の赤ん坊の頃の記憶を覚えていないのと同じようなもんだ。俺様を何百歳だと思ってるんだ?』
桜の質問の答えに、誰もが言葉を失う。
剣の形をしているとはいえ、魔王を何度も倒して来た事実がある歴戦の猛者であることは疑いようがない。この場にいる誰よりも長く生きているのは当たり前だろう。
だからこそ、自分の生みの親すらわからないほど長く――ただ戦い続けるだけの――存在であることに、言い知れない恐ろしさを感じ取っていた。
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