勇者マックスの誕生Ⅳ
一歩間違えれば、サケルラクリマ国とファンメル王国の間に亀裂が入りかねない発言に、勇輝も桜も戦々恐々とする。
「もしかして、第一皇女のアメリアさんが日ノ本国に来たのも……?」
「あぁ、国王様が考えた魔王の完全消滅を成功させるための一手だろうな」
今までは大陸側の力だけで戦ってきた。それを遠く離れた島国である日ノ本国の――しかも、体系が全く異なる魔法を用いる――軍事力を巻き込むことで、戦力の増強に当てると共に、少しでも、消滅させる手段を模索しようというのが伝わって来る。
現在、蓮華帝国とはローレンス領侵略に関する事件で対立している。だが、もしかすると、タイミングさえ合えば、手を取り合っていた可能性はゼロではない。
逆に言えば、マックス経由で蓮華帝国以外とは既に話が進んでいるかもしれないと思うと、ファンメル王国の本気度が窺える。
「だけど、ここで聖教国がどう出るかだ。何せ、魔王が完全消滅して、二度と復活しなくなってしまえば、聖女の役割は不要になる。そうなると、今までと違って、この国に攻め込もうと考える奴が出てきてもおかしくない」
全員の共通の敵がいるからこそ保たれていた平和。それが崩れることで、争いが起こるということは十分に考えられる。むしろ、そんな最中ですら侵攻事件が起きたのだから、それ以上の諍いはあって当然だろう。
「で、でも、それだったら星神様は何でマックスさんを……?」
そこが今回の問題点だ。
枢機卿たちも勇輝たちと同じように、魔王のいなくなった未来については容易に想像がついているはず。そうともなれば、聖教国を存続させるためには「あえて封印に留める」ということも選択肢として十分にあり得る。
しかし、魔王の完全消滅を企てる国王の息子を勇者に指名したのは、彼らが崇拝する星神自身。その意味を都合よく解釈すれば、「時は熟した。魔王を今回こそ復活できぬよう滅ぼすべし」などと捉えることも可能だ。
これを打ち破るには、星神自身が魔王討伐に関して、どのようなスタンスでいるのかを知る必要がある。
「そちらの状況は理解しました。同時にこの国が置かれた状況も」
リブラ枢機卿は、冷静に言葉を紡ぐ出すが、心なしか眉間に皺が寄っているように見えた。対して、マックスは何とも複雑な表情だ。
「……言っておいてなんですが、申し訳ない気持ちでいっぱいです。国王陛下も多くの民を守る為とは言っていましたが、このタイミングでお伝えするのは、自分が勇者に選ばれたことへの当てつけも若干含んでいるように思えてなりません」
「国王陛下のことを悪くいうものではありませんよ。ましてや、父君であれば当然の感情です。自ら喜んで死地に子を送り込もうとする親など、いるはずがないのですから」
一拍置いて、リブラ枢機卿はアルトに視線を向けた。
怒りも憎しみもない、理性の光が宿った瞳。見ているだけで心が穏やかになるだろう、それを受けてアルトは一歩前に進み出た。
「このことは、今後の聖教国――いえ、世界の全てを左右しかねない判断を求められます。何としてでも星神様のお声を聞く必要がある。聖女アストルムとして、今宵はその身を酷使することになります。そのつもりで準備を進めてください」
「わかりました。全力を尽くします」
ここで魔王を消滅させてしまえば、未来にその情報を残すのは最低限で済む。
最初からマックスがそれを話していれば話は早く進んだのだが、こればかりは政治的駆け引きというものもあるのだろう。目の前で国のトップクラスがやりとりする場は、日ノ本国とファンメル王国の会談以来だが、その時とは違った緊張感を勇輝は感じていた。
少なくとも、この話はすぐに結論が出なさそうだ。
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