勇者マックスの誕生Ⅲ
――ファンメル王国の次期国王。
脳がその言葉を理解するまでに、どれほどの時間を要したことか。
「ま、ままま、待ってくれ。ファンメル三世の髪は確か水色だった。王女たちも皆、水色のはずだ。しかし、君の髪は――」
「えぇ、赤ですね。どうも、母の血が強く出たみたいなんです。ほら、皆さんもご存じの紅の魔女と呼ばれるビクトリア様。あのブリジット家の出身なので、それを思い出していただけると助かります」
真っ先にレオ枢機卿が問いかけるが、返ってきた言葉に固まってしまう。
口が開いたまま戻らない。時間経過でやっと勇輝は正気に戻るが、それでも言葉が口から出てこない状態だ。
ただの情報収集、解析の為に呼ばれた勇輝たちですら衝撃だったのだから、勇者としてこれから送り出す枢機卿や旅を共にするアルトが感じたのはそれ以上だっただろう。
「……仮に、その話が事実だったとして、私たちが把握しているのは、あなたが冒険者として長年旅をしていたということ。王位継承権第一位である皇太子が、帝王学を学ぶでもなく、何故、冒険者を?」
リブラ枢機卿の疑問はもっともだ。国を治めるならば、それなりの知識と人望が必要。言い換えるのならば、膨大な学習と貴族の繋がりといっても過言ではない。武器ではなくペンを持ち、野山にではなく社交場にいるべきである。
「まぁ、言いたいことはわかりますよ。ただ、それだけではいずれ限界が来るんですよね。所詮は国内の統治など優秀な家臣がいればどうにでもなる。あなたたちが先程、神官を何人か引き抜いて来ようとしたように」
マックスはため息交じりに肩を竦める。
「これからの時代は国同士のやりとりを密にするべき。そう考えて、若い内からいろいろなところに自分の足で行くことで国内の地理を把握すると共に、友好国のことをできるだけ理解しようと努めた。――時間はかかりますが、確実に将来、実を結ぶことになりますよ」
「なるほど、エルフの方を連れていたのも、その一つという訳ですか」
「いや、アレはイレギュラーです」
ガクリとリブラ枢機卿が前にズッコケそうになる。何とか持ち直したところで、リブラ枢機卿はマックスに問いかけた。
「……失礼。つまりファンメル王国は、これから外交に重きを置く政策を予定しているということですね」
「まぁ、そうなんですけど、あくまでそれは手段であって目標ではないんです。正直、これを言っていいのかは未だに俺自身、疑問ではあるんですが、国王陛下はここで言っておけと念押ししてたので言うしかないんですよね」
マックスの表情が引き締まった。国王であるファンメル三世の言葉を、皇太子がサケルラクリマの枢機卿たちの前で伝える。
その行為の重大さに気付き、勇輝の手の中に一気に汗が噴き出て来た。
「ファンメル王国は、これより先の恒久的平和を確保するために、『魔王の封印』ではなく『魔王の完全消滅』を目的とした魔王討伐大連合軍の創設を視野に動いています」
祭壇にいる者たちが騒めいた。
魔王の討伐とは、今まで百年強の一時的な封印を意味していた。しかし、ファンメル王国はそれを上回る消滅を目的にしている。
本来ならば、それが成功すれば誰もが諸手を上げて歓迎し、歓喜することだろう。だが、ただ一国だけ、それを快く思わない可能性がある。
「魔王の到来、勇者の選定。それらを星神から託された国。それが聖教国サケルラクリマ。しかし、魔王がいなくなったら、それは一体どういう立ち位置になるのでしょうか?」
その問いかけは、サケルラクリマの者には鋭く突き刺さっただろう。自分たちの積み重ねて来た歴史が、これからは通用しない時代が来る。言葉にするのは簡単だが、それを乗り越えなければならないとなれば話が変わる。
下手をすれば、国が傾き、魔王の後を追って消滅しかねない。
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