本来の聖剣Ⅵ
鞘の役割は刀身を守る為、無駄に周囲の者を傷つけない為に存在する。濡れれば錆びるし、そもそも持ち運びするにも不便だ。
壊れない、折れないとされる勇輝の心刀ですら、細かな血を吸収してくれる樹木を素材にして鞘が作られている。ふと、視線を落とすと、勇輝の鞘もまた聖剣の鞘ほどではないが光を放っていた。
(そういえば、魔物の血とかにも魔力が含まれるから、こいつ自体も多少は魔力が宿っていることになるのか?)
今のところ使い道はないが、何かあった時には役に立つかもしれないと頭の片隅に考えを押し込んでおく。
「アレはアレで便利らしいが、その使い道を俺は見たことも聞いたこともない。まぁ、そうだな……それこそアレに直接聞くべき事柄だ」
巨人はゆっくりと腰を上げると、闘技場の外へと顔を向ける。
勇輝たちは闘技場の外に出たことがないのでわからないが、きっと彼には何百年と見続けて来た光景が広がっているのだろう。
「最後に……聖剣からも言われるだろうが、大所帯での移動は止めておけ。今までの勇者の活躍をアレから聞く限り、人数が多いと逆に被害がデカくなりかねん」
「あ、ちょっと!?」
巨人は用が済んだと言わんばかりに闘技場の縁に手を置くと、軽々と飛び越えて行ってしまった。地面の揺れと足音が遠退いていくのを感じながら、勇輝たちは顔を見合わせる。
ここにいる間に、それなりに勇者の武勇伝を聖剣の一部がかなり話しているであろうことは明らかだ。それも含めての意趣返しなのだろうが、果たして、そう簡単に聖剣が話をしてくれるかと考えると、それもまた微妙なところ。
アルトとソフィアを見れば、二人とも不安そうな顔をしている。枢機卿たちが、この中途半端にしか手に入らない情報を良しとするとは到底思えない。恐らく、このダンジョンから抜け出た後に待つのは、気の遠くなるような質問攻め。
「……マックスさんが、気を悪くしないと良いんですが」
どうやら、勇輝と考えていることは同じだったようで、大きなため息をアルトがつく。ただ魔王を探して倒せばいいというのは御伽噺だけの話。実際は情報収集に、護衛や戦力の配置、資金の用意など様々な裏方の話があるに違いない。
その中の一部とはいえ、聖女としてやらなければいけないことが多くある彼女を見ると、勇輝としては本当に気の毒と言う他ない。せめて、何かの助けになれないかとこうしてこの場にいるのだが、できることなど無いに等しい。
「おい、何度も言うけど、同じしゃべる剣として何かないのか?」
心刀に話しかけるも、相変わらず返事は無し。どこに質問をしても肝心なことは言わない者ばかりで、話が進まない。
こうなったら夜に聖剣のいないところか、夢の中で問い詰めるしかないと勇輝は心に決めた。
「勇輝さん。とりあえず、私たちはどうしよう? ほら、マックスさんたちが満足するまで時間かかりそう」
「うーん。この辺りには魔物がいるようには思えないからな。でも、俺の魔眼に反応するものもないし……」
勇輝が首を傾げていると、アルトが闘技場の観客席。その頂上を指差す。
「では、念のため闘技場の外の様子を確認していただいてもよろしいですか? 巨人さんの鍛冶場あるということだけでも大きな情報にはなりますが、それ以外の様子も知っておけば、何かの助けになるかもしれないので。ソフィアは、マックスさんの鍛錬が終わったらお願いね」
「なるほど、最終階層は今までと違って開けているから、そういった情報も必要か……」
ダンジョンが現実の土地の広さと同じ課は怪しいところだが、他のダンジョンと干渉しかけた前例があるので、大体の広さを知っておくことは重要だろう。加えて、勇輝の魔眼があれば異変に気付くこともできる。
「それじゃあ、桜。一緒に行こうか。念の為、式神を飛ばして確認する?」
「うん。肉眼で見れる距離も限界があるし、近くで寄ってみたらわかることもあるかもしれないから。ただ、四方全部を見るには時間がないと思う。ちょっと式神を頑張って大目に飛ばしてみるね」
ポーチから見覚えのある式神用の人型の紙が数枚取り出された。
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