本来の聖剣Ⅴ
「しかし、困りましたね。勇者のことも、魔王のこともわからず、聖剣に関しても不明のまま。ここは、やはりエトナ様に直接聞く方が良い気がしますね」
アルトは背後の戦っているマックスたちを振り返る。
互いの聖剣が同時に急所の手前で止められており、相討ちの状態。そこから飛び退ったかと思うと、再び戦闘を開始する。心なしか、マックスの表情は今日一日の中で最高の笑みを浮かべているように思えた。
勇輝自身も夢の中で鍛錬をしていることが多いのだが、自分も同じような表情なのかと少しばかり心配になる。傍から見れば戦闘狂以外の何物でもない。
「初代の勇者と会ったことがないということは、聖剣がどこから現れた、とかも……」
「知らん。因みに黒騎士とやらが持っていた魔剣の方も、その頃にはあったらしいが詳細は聞いたこともない」
巨人の言葉に、ソフィアへと視線が集中する。彼女が保有する魔剣グラムは、邪竜退治に用いられたものだと聞く。それを考えると、聖剣と同じくらい由緒正しき剣であることがわかるのだが、やはり魔王と邪竜では脅威度が違うということだろうか。
「その邪竜とやらは、今までに復活は……?」
「しておらんな。恐らく、緑の峡谷とやらに棲みつくドラゴンの中で、質の悪い奴が暴れ回ったんだろう。あいつらは精霊種に近いものの、あくまで生物だ。殺して生き返るということはあり得ないな」
「そうですか。流石に魔王と邪竜を同時に相手することにはならなくて良さそうだ」
ソフィアはほっと胸をなでおろすが、今の会話が正しければ、初代勇者と当時の黒騎士の何者かは、その強敵をどちらも打倒していることになる。よほど、強い者が揃っていたのだろう。
「初代の頃の黒騎士は、聖女護衛が主任務ではなく、最強の騎士が受け継ぐ称号だったらしいですからね。伝え聞いた話では、勇者と聖女を放っておけずに後から追いかけて合流したとか」
「……逆に言えば、その時までは二人旅だったってことだよな。やっぱり、相当強かったんだろうな」
見たこともない伝説の人物を想像する。パッと頭の中に浮かぶのは、ファンメル王国の最強と名高いローレンス辺境伯だろう。少なくとも、そんな人物でなければ聖女との二人旅など到底こなせるとは思えない。
「役に立つかどうかはわからんが、聖剣の秘密を一つだけ知っている。アレもそう簡単には話そうとはしないだろうが、魔王討伐には影響がないだろうし、意趣返しとして伝えておこう」
巨人はニヤリと笑みを浮かべて、マックスたちが戦ってる方を顎でしゃくる。
「あそこにいるのは聖剣とその力の一部が具現化したものだが、もう一つ聖剣に連なる者がいる。どこかわかるか?」
「えっと、聖剣と黒い聖剣以外にもう一つ、ですか?」
アルトが目を細める。勇輝もまた同様に観察するが、三振り目の聖剣など見つけられない。闘技場全体を見回して、どこかに隠されていないかと魔眼で確認するが、視界にそれらしき物は見当たらなかった。
一瞬、巨人にからかわれているのかとも思ったが、そんなことをするようには思えない。何しろ意趣返しとまで言い切ったのだから、むしろ、教えたくて仕方がないといった様子だ。
「あの勇者の腰につけている鞘があるだろう? あれも聖剣と同じ類のものだ。尤も、それを単体で使用したのは二代目の時だけとも聞いているがな」
「鞘が、聖剣並みの武器?」
刃も無ければ、持つところすら無い。そんな物はただの振り回しにくい鈍器だ。少なくとも、勇輝は好んで使おうとは思わない。一体それでどのように戦ったのかとすら思ってしまう。
ただ、巨人の言うことを冗談だと一笑に付すには早計だ。何せ、魔眼には聖剣と同じように輝く鞘が、ずっと前から映っていたからだ。
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