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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第22巻 からくれなゐに染まる腕

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疑惑Ⅰ

 ギルドに再び戻ってきた勇輝と僧正は、七丸を別室に待機させて奥の部屋へと通された。

 意外にも中は洋室で、テーブルと椅子が用意されている。逆に言えば、それだけしかない殺風景な部屋とも言えた。


「まず、こちらの要請に従っていただけたことに感謝を。私の名前は、夕凪刹那(せつな)。西園寺家に仕える者です」

「我らのことは知っているようなので自己紹介は省こう。しかし、西園寺家の密偵がどうしてこのような所に?」


 僧正の質問に刹那は勇輝へと視線を動かす。

 上下ともに白で統一された服装だからこそだろうか。彼女の真っ黒な瞳がより映え、鋭く射抜いてきているように勇輝は錯覚した。


「それに関しては内守氏に話をした方が早いでしょう。土蜘蛛の封印塚が破られた事件については、覚えていらっしゃいますか?」

「もちろんです。あれは忘れたくても忘れられるような経験ではないですから」


 勇輝が肯定すると、刹那は小さく顔を頷かせる。


「結構です。それならば話は早い。つい先日、その封印塚を破ろうとしていた一味の残党が、この街に潜伏していることが発覚しました。あなた方に近づいた三人組もその仲間です」

「なるほど、犯罪者集団の残党狩り。最後の一人になるまで気は抜けぬ。むしろ、最後の一人を捕らえきることこそ、実際は最も難しい任務になる。それを請け負っているお主は、相当優秀なのだな」

「お褒めにあずかり光栄です」


 土蜘蛛が本当に蘇っていたら、街の一つや二つの犠牲では済まなかった。

 そして、まだそれを続けようとしている組織が存在する事実を、勇輝は信じられなかった。仲間が大勢死に、その仲介をしていた商人も捕縛されている。金欲しさで行動するには、あまりにも危険が伴い過ぎる。


「封印塚を壊す組織であるというのなら、我らが襲われる理由にはなるまい。土蜘蛛を倒した勇輝だけが狙われるというのならば、理解はできる。だが、あの者らは我らが保護していた少女に固執していた」

「はい。それを説明するためには、もう一つの事件のことを話しておかなければなりません」


 そう告げた刹那は立ち上がると、勇輝たちが入って来た扉とは反対側にある扉へと手をかけた。

 開かれた扉の向こうには、見覚えのある人物が立っていた。


「あれ? あの時の……」


 薬草採取に向かう際に勇輝とぶつかった男であった。

 神妙な面持ちで入室した男は、自らを一茂と名乗り、一度大きく息をつく。この時期だというにもかかわらず、額からは汗が流れて頬を伝い落ちている。この場にいる誰もが、一茂が極度の緊張状態にあることを察した。


「……最近、封印塚がもう一つ壊れそうになっている。そんな噂を聞いてはいませんか?」


 まるで遊んでいた際に不注意で窓を割ってしまった生徒のような話し方をする一茂。どこか頼りなさげな雰囲気を醸し出す彼の言葉に勇輝と僧正は、一瞬、顔を見合わせた後、ゆっくりと頷いた。

 一茂は震える唇を何とか動かして、声を絞り出す。


「その封印塚が既に破れていた、と」

「何と……!?」


 想像だにしていなかった一言に、流石の僧正も驚きを隠せない。腕を組んで余裕の表情だったその目が限界まで開かれ、一茂を射抜く。


「封印対象の行方は知れず。現在、全力で捜索している――――と言いたいのですが、ギルド長が明日の準備に忙殺されて、まだ報告出来ていないのです。そこで派遣されていた兵の中に、西園寺家の者がいないかと縋る思いで聞いてみたところ――――」

「――――運良く、私へと繋がった、ということです」


 一茂とは対照的に、冷静沈着な刹那が言葉を引き継ぐ。

 曰く、「ギルド長は港と検問所を取り仕切っている北御門隆二と打ち合わせを行っているようで、情報漏洩を防ぐために、一般職員でもそう簡単には入室できないようになっている」という。つまり、そこに取り次ぎたいのであれば、その理由を話さなければいけなくなる。上からは四方位貴族及びギルド関係者以外には、まだこの件を知らせてはならないと言われている一茂としては、そこで詰んでしまったというわけだ。

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