疑惑Ⅱ
「ですが、問題はここからです。ギルドには、塚へ封じられた魔物の情報が残っています。その内容には一部の者にしか開示されないので、私にもわかることには限界があります。その上で、一茂さんから伝わっていることを――――お願いできますか?」
刹那に促されて、一茂は何とか口を動かす。
「十歳を超えたくらいの、お、女の子の姿をした、鬼であると……」
「それは、つまり七丸が疑われている、ということですか?」
勇輝の目が鋭くなる。
それを真正面から見返して、刹那は即座に頷いた。
「このギルドで登録した時に、あなたは『保護者ではない』と言い、職員の孤児という言葉を否定しなかったと聞きました。つまり、彼女は封印塚から抜け出した鬼である可能性があるということ」
彼女はここ数日より以前の活動が保証できるのならば何でもいい、と言う。父だろうが、母だろうが、兄妹、姉妹だろうが、祖父母だろうが、叔父叔母であろうが、誰でも良い。それこそ、ギルドの職員でも構わない、と。
だが、七丸にはそれが無かった。少なくとも、勇輝には出会う前の彼女の生活していた痕跡を証明できない。
「しかし、彼女の様子を見るに鬼とは思えません。いえ、だから安全であるという意味ではないのですが」
「魔物が自らの力を隠している。或いは、本人ですら自覚できていない、ということもあり得る。お主の言う『安全でない』というのは、確実な保証ができないという意味であろう」
僧正は目頭を揉みほぐしながら、淡々と告げる。
ただ、僧正には天耳通という嘘を見抜く力がある。それ故に嘘は通じないので、力を隠しているというのは考えられない。
従って、七丸が封印されていた鬼だった場合、自覚がない状態であることの方があり得る。
「――――もし、彼女が鬼だった場合は、どうするんですか?」
「当然ですが、討伐対象になります。それが例え、見た目が少女で自覚がなかろうとも」
一縷の望みを賭けて、勇輝が絞り出した疑問は、即座に斬って捨てられた。
刹那の目は、七丸が赤子であろうとも鬼であると判断されれば、躊躇なく殺すと訴えている。それが理解できてしまった以上、勇輝にできることは、七丸が鬼でないことを証明することだけ。
「(七丸を俺の魔眼で見ても、それが証明とはならない。潔白を証明するには、彼女が封印塚が壊れるよりも前に存在していた人間であることを示さなければいけないか)」
その為には情報が足りない。少なくとも、七丸からどのようにこの街へと辿り着いたかを聞かなくては、誰かに尋ねようにも時間がかかりすぎる。そこまで考えた時に、一つおかしなことに気付いてしまった。
「いや、ちょっと待ってください? そういえば、鬼の容姿についてはギルド職員や四方位貴族にしか知らせていない、と言っていましたよね? 何故、あいつらは七丸を狙ったんですか?」
あの三人組の男たちは、犯罪組織の一員であった。
つまり、本来は封印塚にいたとされる鬼の容姿について知っているはずがない。どこかで情報が漏れていたとしか考えられない。
「そこについては私もまだわかっていません。これから調査をするところです。ただ、まだ彼らの組織は力を失っていないということでしょう。最悪、今回の封印塚の補修を行うために集まった者の中に、裏切り者がいてもおかしくないとさえ、私は考えています」
平然と言ってのける刹那だが、その発言は少なくともギルドの職員には到底できない発言だ。国の要請で集まった術士たちの中に裏切り者がいるなど、口が裂けても言うことはできない。それは一歩間違えば、今回の事件の責任は国にあると批難することになりかねないからだ。
しかし、彼女はそれを踏まえた上で堂々と発言する。国を見張る四方位貴族の臣下ならば、当然であると言わんばかりだ。
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