追跡Ⅵ
僧正は声を潜めて、七丸の頭越しに勇輝にだけ聞こえるように呟く。
「あれが後をつけていた奴らだ。入って来たばかりだから、一瞬だけなら見ても大丈夫だろう」
「わ、わかりました」
僧正に促され、手元にある出されたお茶をすすりながら、勇輝はチラリと店の入り口を盗み見た。
そこにいたのは、明らかにガラの悪い三人組――――というわけではなく、特に違和感のないこの街の住人といった具合だ。
全員、同じ位の背丈で簡素な服に刀を一本指している。ただ、防具という防具もなく、護身で持ち歩いているだけというように感じた。
ただ一点、勇輝が違和感を感じたのは目だった。店内には勇輝たち以外にも客はいる。
普通ならば、空いている席を探すはずなのに、店員と話していない二人は、品定めでもするかのように一人一人を順番に見ていた。
視線がゆっくりと自分の方へと近づいてきているのがわかったので、勇輝は静かに前を向いて、焼き鳥を焼く作業を観察する。
「(俺たちを追っているなら、すぐに目が合ったはず。いや、まさか――――)」
自分の左側に座る七丸を見て、勇輝は考えを巡らせた。
ちょうど、彼らの位置からは七丸の姿が見えにくい。つまり、最初から目的は七丸なのではないか。
「(――――いや、考えすぎだよな。尾行するなら見えにくい七丸より、俺や僧正さんを見ていた方が分かりやすいんだから、結局、すぐに目が合うか)」
変な所で心配性な自分の性格に、内心、苦笑いしていると背後で足音が止まった。
「おう、兄ちゃんたち。ちょっといいか?」
「……何か?」
先頭で店員と話していた無精髭の男が、袖に両手を入れて勇輝と僧正を見下ろしていた。
「聞きたいことがあるんだが、あんたら――――家族か?」
「……何か問題でも?」
相手の行動が読めないので、勇輝は攻撃に反応できるようにと魔眼を開く。刀を抜くことは出来なくても、鞘ごと動かして一撃くらいは防ぐことは可能だ。
近くには僧正もいる。故に、僅かな時間さえ稼げれば問題はない。
「その女の子。本当に君たちの家族か、と聞いている」
「おかしな話だ。この子が本当に我々の家族ならば、そもそもお主たちが聞いて来るなどということは考えられん。では、この子が我々の家族でないというならば、お主たちは何か? この子の本当の家族だとでも?」
僧正が余裕の表情で問いかけると、無精髭男の後ろにいた一人が一歩前に踏み出そうとする。
それを無精髭の男が片手で制して、僧正へと視線を向けた。
「いや、俺たちは人探しをしている者でね。ただ依頼主の情報があまりにも少なくて困っているから、手あたり次第、声をかけて回っているのさ」
「ほう、どんな情報だ?」
「そうだな。まず前提条件として、この子みたいな女の子だ。ただ、髪の長さや服装はよくわかっていない。ただ、一番わかりやすい特徴って言うのがあってな――――」
唐突に無精髭男が七丸の右腕に手を伸ばす。
それを勇輝は柄で手首の辺りを下から上へと思いきり上に跳ね上げた。
「悪いけど、この子に気安く触れないでくれるか?」
勇輝と僧正が椅子から立ち上がると、店内に張り詰めた空気が漂い始める。店員もお茶を用意しながら、横目で成り行きを見守っていた。
「てめぇ、いい度胸してるじゃねえか。先に手を出したのはそっちだ――――」
一度、手を振って痛みを散らした無精髭男が右手を振りかぶるが、その手が勇輝に届くことはなかった。
「失礼。急に人に暴力を振るおうとしているように見えたので、止めさせてもらった。少し、話を聞かせてもらおうか?」
「げっ……!?」
振り被った腕を掴んでいたのは、先程、僧正が話しかけた警備兵。既に鎧兜は脱ぎ去っているが、その声と顔をこの短時間で間違える筈など無かった。。
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