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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第22巻 からくれなゐに染まる腕

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追跡Ⅴ

 七丸の手を握る手に力が入りかけるのを我慢して、勇輝は僧正の後を追う。

 僧正は数軒進んだ人が比較的少ない店を見つけると、人にぶつかることなく中へと入っていく。


「すまないが、ちょっといいかい?」


 兵に話しかける時とは違った口調で、従業員の若者へと片手を挙げて声をかける。

 すぐに軽く頭を下げながら近づいてきた若者へ二言、三言話すと、店先まで出て来た。彼が指差す方向を見ながら、説明を聞いている。

 十秒もしない内に僧正が礼を言うと、若者は笑顔で店内へと戻って行った。


「どうでしたか?」

「うむ、とりあえず、昼飯が食えそうな店と甘味処が近くにある店を聞いたら、ちょうどいい所を教えて貰えた。まずは、そこに向かおう」


 僧正がすぐに歩き始める。

 勇輝は尾行して来る者が誰かを確かめたい気持ちに駆られたが、僧正の忠告に従って彼の背中を見る。


「(海京ほどではないけど、ここまで人が多いと流石にずっと見ていない限り、誰が追って来てるかなんてわかんないよな)」


 自分に何とか言い聞かせて、歩く中、七丸は甘味という言葉が聞こえたらしく、向日葵のように満面の笑みを浮かべた。空腹時に食べた甘さは、どうやら記憶に強烈に残っているのだろう。既に口の端が太陽の光を反射し始めていた。

 今後、勇輝たちがいなくなった時に、甘いものばかりな食生活を送り始めないか。勇輝は、いささか不安に思い始める。我慢することも覚えさせなければならないかも、と。

 海外の映画の子役などで大成功した人が、後に破産したり、変な薬に手を出したりして人生を棒に振るなんてことを聞いたことがある。勇輝が言えた義理ではないが、世間の常識や親が躾けるべきこと。それが七丸には必要だ。

 そんなことを考えている内に、目の前を歩いていた僧正が視界から消えた。慌てて、左右を見回していると、七丸が手を引っ張ってくる。

 彼女を見ると右の店を指差していた。


「おじいちゃんは、あっち!」

「あぁ、ありがとう。見失った所だったから助かったよ」


 えへへ、と嬉しそうにする七丸と共に店の中へと向かうと、ちょうど僧正が振り返った。


「何だ。そんなところにいると他の客の邪魔になるぞ。ほら、もっとこっちに来んか」

「あぁ、すいません。ちなみにここって何の店ですか?」

「見ればわかる。あれだ」


 カウンター越しに店員が何本もの串を取り扱っているのが見える。肉を幾つも差したそれをタレに着け、炭火で炙っていた。

 いわゆる焼き鳥であるが、背後のメニューを見るとその中に見慣れない言葉が見え隠れする。


「はつ? せぎも? あいだ?」


 七丸も気になったようで、何度も頭を傾げながら達筆に書かれた文字を読む。


「『はつ』は心臓、『せぎも』は腎臓、『あいだ』は心臓と肝臓のつなぎ目の部分だな。簡単に言えば部位の名前だ」

「(……烏天狗なのに焼き鳥食べるの?)」


 僧の身で肉を食べるだけでなく、よりによって同族――――と呼んでいいのかは知らない――――の肉を食べるということに、勇輝は複雑な気持ちになった。

 そんな勇輝の気持ちを知る由もなく、店員に促されるまま僧正の横へと腰掛ける。


「最近は、他の国の様式も増えているようだな。この椅子というのもなかなか面白い。まぁ、木の硬さを直に受けるのはまだ慣れないがな」

「自分は結構、慣れているので、特に違和感はありませんね。むしろ、長時間の正座とかの方が苦手です」

「正座は、足が痛くなるからいやー」


 七丸も正座と聞いた瞬間に、不機嫌な顔になる。

 僧正は大笑いしながら、店員にまとめて三人分の注文をすると、穏やかな声で告げた。


「正座というのは、やり方を知っておかんとな。それに慣れもある。いずれ、お主もそう言った場に出ることがあるやもしれんから、今の内に慣れておいた方がいいぞ」

「え、何ですか。急に怖いこと言わないでくださいよ」


 正座を長時間しなければいけない場所に出る機会など想像つかない。ただ、あるとするならば、桜の家や僧正の寺、海京の城が考えられる。

 困惑している勇輝に僧正が微笑んでいるが、一瞬だけ、その目が鋭くなったのを勇輝は見逃さなかった。

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