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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第22巻 からくれなゐに染まる腕

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追跡Ⅱ

 昼前になり、勇輝たちは一度、薬草の収集を切り上げてギルドへと向かっていた。

 勇輝の見立てでは、ファンメル王国で荒稼ぎしていたほどではないが、それでも七丸が一週間以上は暮らしていける薬草を集めることができた。


「お主、刀を振るより薬師の道に進んだ方が良かったかもしれんな」

「それ、本気で言ってます?」

「まさか。冗談に決まっておろう」


 勇輝の貸した鞄を嬉しそうに運ぶ七丸を見ながら、二人は笑う。

 少なくとも、半日未満の時間で七丸は自分だけの力で薬草を見分けることができるようになった。もちろん、勇輝ほど早く選別できるものではないが、これで衣食住に困ることはないだろう。


「薬草って、冬でも枯れないんですね」

「薬草に限らず、あまり地面から生える草は枯れることがないな。もちろん、種類によるのだろうが、あの娘が採取できずに困るということはないだろう」


 事実、孤児の子供の中には寺社に預けられた後、七丸のように薬草採取で日銭を稼ぐという者もいるらしい。おかげで日ノ本国ではほとんど貧民街の形成などが起こっていない。その一方で、ファンメル王国でも働き口がなく路頭に彷徨う人がいたことには疑問が浮かんでくる。


「薬に関しては、常に供給がいる状態だ。何せ各地にある迷宮の調査や攻略に大勢の人間が挑んでいるからな。冒険者にしろ、国の抱える兵にしろ、食料と同じくらい必要な物資だ。そんな材料がほぼ無尽蔵に採取できるというのは、都合が良すぎるがな」


 僧正は言うものの、十段階に分けられる薬草のランクの内、普通に目にするのは下位の三つくらいまで。上位五つともなると、採取しただけで事件になるレベルだと以前、聞いたことがあった。

 状態異常や呪いを治癒するものもあれば、噂では死んだ者も蘇らせるとか。

 薬草ではないが、勇輝も呪いを治すアイテムを迷宮の宝箱から入手したことがある。その為、その存在を疑うということはないが、僧正の言う「都合の良さ」に同意したい気持ちが強かった。


「ただ、あの娘のように物覚えが良い物ばかりではない。加えて、お主のように薬草を見分け、丁寧に教える者と出会えるとも限らない。不運にも、貧困から抜け出せずに消えて行く命もあれば、身売りして世界の広さを知らずに消えて行く命もある」


 僧正は小さくため息をついた。

 人よりも長生きした分、より多くのものを見て来た僧正が放つ言葉には、自然と重みが感じられる。

 元々、人であったからこそ助けられた命も、天狗となってしまったが故に助けられなくなったこともあるのだ、と僧正は勇輝に語ったことがあった。


「選択というのはいつ訪れるかわからぬ。そして、その選択が後になって悔いを残すことも、また然り。故に、いつ選択を迫られようと動じぬ心構えだけは忘れてはならん。その点、お主の今回の選択は良いものであった」

「まだ、この先どうなるかはわかりませんが、この瞬間だけはそうですね」


 二人で話していると前方から七丸の声が飛んでくる。


「お兄ちゃん、おじいちゃん。早く早く!」

「だから、我は今は爺さんではないと言っておろうに」


 僧正が唸るが、勇輝は苦笑いを浮かべる。

 見た目の問題ではなく、貫禄のある雰囲気と話し方がお爺さんに近いのだとは口が裂けても言えない。ただ、七丸に慕われているのは事実なので訂正する必要もないだろう。

 勇輝は僧正が初めて会った時よりも、少し穏やかな雰囲気を纏っているように感じた。

 薬草を採取している時も、なんだかんだ言って七丸を心配して見守っていたのを勇輝は知っている。

 だからこそ、勇輝は僧正に言い出すべきか悩んでいた。


「(七丸の右腕――――あれは一体?)」


 勇輝が七丸の持って来た薬草を確認するために魔眼を開いた時、袖をまくった彼女の右肘の近くに、一本のくっきりとした赤く細い線が走っていた。

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