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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第22巻 からくれなゐに染まる腕

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追跡Ⅰ

「不味いことになった」


 封印塚を修復するために集まっていた者たちは、頭を抱えていた。

 神道の禰宜(ねぎ)や巫女、仏教の僧侶や山伏。果ては武士や陰陽師たちも周囲を警戒しながら、浮かない表情をするしかない。


「魔を探知しながら結界を狭めてここまで来たが、こんな結果になるとはな」

「どの結界にも引っかからず、抜け出た形跡がない。つまり、既にここはもぬけの殻、ということになります」


 認めたくないといった様子で誰かが呟いた。しかし、事実として封印されていた魔物は見つからなかった。あらゆる種類の結界を張り巡らせ、時間をかけて山を取り囲んだ。その状態から、山頂に向かってゆっくりと狭めていき、追い込む。

 それが彼らの作戦だったのだが、辿り着いたのは数時間前に壊れたことを確認した封印塚だった。地面も空も包み込む球状に結界に抜け道はない。よって、考えられるのは二つ。


「我々がここに辿り着くまでに何らかの方法で抜け出した。或いは隠れてやり過ごしたか」

「それとも、この追い込み作戦の遥か前。結界が張られる前にここからいなくなっていたか」


 いずれにしても、封印塚に入っていた魔物が野放しになったとなれば大問題だ。少なくとも村や町のいくつかが壊滅してしまうことも考えねばならない。


「ギルドの方。ここに封印されていた魔物は人型の強力な鬼である。そう聞かされていただけだけど、他に何かわかっていることはあるのですか?」


 巫女の一人が問いかけると、ギルド職員数名の内、一人が前に進み出た。手に持った書物を捲り、それを一通り流し見て、はっきりとした口調で答える。


「はい。最後に封印が解かれたのは八十年ほど前になります。破られた封印塚の中では、先日の土蜘蛛の封印塚を除いて、一番最近の事件でしょう」

「その際の破られ方は?」

「記録によれば、今回と同じような封印塚の補修を行う過程で起きたようです。正確には、囲いを修繕し、術をかけ直す段階で、です。どうも人数が少なかったようで、結界が維持できなかったということになっています」

「……なっている?」


 どこか含みのある言い方に何人かが眉根を寄せる。

 それはギルド職員も気付いているようで、少しばかり表情を曇らせた。


「あまり大きな声では言えませんが、当時は色々な派閥の争いが起こっていたようでして……。今でいう巫女長のような立場を得るために、他の方々を蹴落とそうとした結果――――」


 一瞬、躊躇った後、その職員は口を開いた。


「封印塚周辺にいた方々は全滅。一瞬にして炎に巻かれてしまったのだとか。皆さんに耐火の術式をお願いしていたのも、それが理由です」

「なるほど、それで、その後はどのようにして封印を?」


 巫女は職員の言葉に納得しながら、次の説明を求める。


「当時の北御門家、東雲家の当主が率いた精鋭部隊が時間を稼ぎ、その間に海京から新たに派遣された陰陽師と巫女の混成部隊の結界によって鎮圧したとのことです」

「つまり、その時に鬼の姿を見ているのだな? 特徴は?」


 今まで黙っていた山伏が腕を組んだまま、静かに問いかける。

 ここに来るまで、巫女や陰陽師は封印するための術式などが伝えられていた一方で、僧侶や山伏たちはそこまで詳しく話を聞かされていない部分があった。しかし、封印が解かれた今、術式よりも大切な情報は、まず発見するための見た目だろう。前例がある術式を今から模倣したり、自分たちの術を無理矢理改変するよりは明らかに効率がいい。


「その、非常に言いにくいのですが――――」


 職員は手に持っていた書物を閉じて、一旦、全員の顔を見回した。

 その瞳には疑惑や迷いと言った色が見え隠れする。それでも、意を決して彼が放った言葉は全員に戸惑いの表情を浮かばせるには充分であった。


「――――()()()()()()()姿()()()()()()()です」

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