混乱Ⅵ
勇輝は道から外れた野原へと視線を向けると、瞬き一つで魔眼に切り替える。
薬草は白い光を放っていることが多いので、それを遠くから見つけて群生地が無いかを確認してみた。すると、遠くの方に、まばらではあるが白い光を見つける。
「よし、あっちの方にありそ――――いってぇ!?」
「すまん、兄ちゃん! 先を急いでるんだ!」
魔眼を閉じ、指で方角を示そうとした矢先に、反対側の肩に強い衝撃が走る。バランスを崩して倒れそうになりながら、勇輝は肩を抑えて姿勢を立て直した。
衝撃の原因は、どうやら人とぶつかったことらしい。背後から飛んできた謝罪でそれを理解できたが、だからと言って納得できるかどうかは別の話だ。
既に僧正の遥か後ろへと走り去る人影を見て、ムッとしていると、僧正が苦笑いする。
「例の姫様のことで忙しいのだろう。気持ちはわかるが、ここで怒っても仕方あるまい。それより、薬草の位置だが――――」
「あぁ、それなら、さっき、俺の眼で確かめました。あっちの方にあるみたいですね」
改めて確認した方角を指差すと、七丸が勇輝を追い越して走り出す。
「あっちだね。いっくよー!」
「あ、こら、待て!」
慌てて、勇輝が七丸を追いかけ始めるが、意外なことに七丸の足は早い。軽く追いつくと思っていた勇輝だったが、すぐにその差が縮まらないと見るや、足に魔力を回して一気に横へと並ぶ。
七丸が驚きながらも必死で腕を振って逃げようとするが、それは槍が邪魔をして加速ができない。
そんな姿を見て、僧正は一人笑みを浮かべる。
「ふっ、騒がしい童だ。それにつられるあやつも、まだまだよ。しかし――――」
僧正は走っていく七丸を見て、眉を潜めた。
身体強化を使っていない勇輝を突き放すとまではいかぬものの、素早く動く姿をじっと見つめる。
そもそも、七丸は孤児のような身で、勇輝と出会った時には栄養が足りずにうずくまっていた。たかが甘味を食べた程度で体がそこまで回復するかと問われれば、否定とまではいかなくとも疑いの眼差しを向けるのは不思議ではない。
「――――呪い、か。少なくとも、我にはわからぬが、あそこまで動けるならば問題は無かろう」
憑依。そして、呪縛と書かれていたというギルドの調査書。
僧正はギルドへの登録をしたことが無いが、字面からその程度の内容は想定できたようだ。しかし、ぱっと見た感じ、七丸に何かが憑いているという雰囲気は見受けられなかった。加えて呪縛ともなれば、何かしらの良からぬ雰囲気を感じ取るものなのだが、僧正はそれすら感じぬ、と呟いた。
「そもそも自他含め、その場にいる者が誰も認識していないものをどうやって読み取るのか。世の中、生きていると不思議な物事が増えるものよ」
僧正の心配の眼差しに気付かずに、勇輝と七丸は薬草が生えているだろう場所に到着する。
「よし、この辺りだ。今から取って良い草とそうでない草を見分ける練習するからな」
「えー、全部、緑色でよくわからない。雑草は燃やしちゃおうよ」
「こらこら、燃やしたら、ここだけじゃなく、山も街も燃えて大変なことになっちゃうでしょ。俺たちは、傷ついた人が飲むお薬の素を集めに来たんだから」
勇輝はすぐにしゃがんで薬草らしき草とそうでないものを、さっとむしり取る。
「はい、葉の形に注目。こっちはまっすぐに伸びているけど、こっちは手みたいに大きく広がってるよね。だから、まずはこんな形の葉を探してみよう」
「よーし、いっぱいとるぞー」
「あっ! そんな中途半端な所から千切ったらもったいない!」
慌てて、採取自体のやり方から手取り足取り教える勇輝であった。
【読者の皆様へのお願い】
・この作品が少しでも面白いと思った。
・続きが気になる!
・気に入った
以上のような感想をもっていただけたら、
後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。
また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。
今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。




