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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第22巻 からくれなゐに染まる腕

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混乱Ⅲ

 席に座らずに、そのままいくつか紙や水晶を用意すると早口に男は捲し立てる。


「冒険者登録を承ります。こちらの水晶に手を当てていただいて、この紙に書き出された情報が問題なければ登録完了となります。その際には、この冊子に書かれている内容をしっかり確認しておいてください。では、どうぞ」

「あ、はい……ほら、この水晶に手を乗せて」


 子供に促すと一瞬、不安そうに勇輝の顔を見上げた後、恐る恐ると言った様子で水晶に手を触れた。


「子供とは言えど冒険者になるということは、戦闘系の依頼も受注できてしまいます。その際に事故が起きても我々ではどうすることもできません。当然、依頼受付の際には注意を促しますが、それにも限界があるので保護者の方はしっかりと注意をお願いしますね」

「あ、俺、実は保護者じゃないんです。通りすがりに、この子があまりにも酷い格好でうずくまっていたので、薬草採取とかで食い繋げられるようにと思いまして」

「はぁ、そうですか。あまり孤児などに肩入れするとキリがありませんよ。そういうのは、まず神社か寺に預けるのが一番です。おっと、出た出た」


 男が水晶を横にどけると、その下にある書かれた文字が露になる。


 氏名:不明 仮称:七丸と規定する

 年齢:不明 

 性別:女 

 出身:不明

 種族:■人

 健康状態:栄養失調、気力欠乏

 魔法適正:可

 特性:憑依(呪縛)


「(名前は生まれた時から与えられていない? いや、仮にそうだとしても年齢も出身も不明っておかしくないか?)」


 水晶が何を基準に紙へと書き出しているかは不明だ。

 もし、本人の意識下にあるものを読み取っているのだとしたら、本人は名前を呼ばれたこともなく、自分の誕生日も、この国自体も知らないということになる。


「――――っていうか。性別にも驚かされたけど、おまけにちょっと滲んでるし、それに呪縛って何だ? どう考えても不吉なものにしか見えない。そこらへん、どうなんです?」


 勇輝が男に問いかけると、彼自身も首を傾げていた。どうやら、ギルド職員でも知らない内容が書き出されることもあるらしい。


「すいません。こういうのは担当か。ギルド長とかしかわからないんです。ただ、憑依ってことは何かしらの霊に取りつかれてるってことですよね? それこそ、神社やお寺でお祓いなり何なりしていただければ問題ないでしょう。良かったですね。大事になる前にわかって」

「う、うん」


 何やら、自分が呪われているかもしれないということだけは理解できたようで、不安そうに七丸は頷く。


「とりあえず、これはこちらで受け取っておきますね。こちらがギルドの証明証になります。無くすと再発行にお金がかかるので気を付けてくださいね」


 早く自分の仕事を終わらせたいという気持ちが滲み出ており、勇輝へと押し付けるようにして渡すと、さっさと元の位置へと戻って行ってしまう。


「と、とりあえず、薬草採取の依頼だけでも何とか教えておくよ」


 その後、勇輝たちは一度、カウンターを離れて、近くの長椅子に腰かける。

 一通り薬草採取の仕方や見分け方を軽く説明し、勇輝の支払いで鞄や採取用の道具を買いそろえていく中で、ふと勇輝は気付いた。


「そう言えば、名前が無いのも困るよね。カードには七丸で仮登録みたいなことが書かれていたけど」

「ううん。それでいい。響きも可愛いし」

「そういうもんか?」

「うん」


 どこか嬉しそうに頷く彼女の姿に、勇輝は本人が喜んでいるのならば、と納得することにした。


「(流石にこのまま放りだすのも気が引けるし、呪縛のこともある。一度、僧正さんに診てもらって――――)」


 そこまで考えて、勇輝の動きが止まった。腕時計を見ると既に約束の時間ギリギリになっている。慌てて名無しの子供改め、七丸の手を引いてギルドの外へと走り出した。

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