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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第22巻 からくれなゐに染まる腕

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混乱Ⅱ

 勇輝はギルドを訪れて、連れて来た子供を冒険者に登録させようとしたのだが、踏み入れた瞬間からギルドの様子がおかしいことに気付く。


「何だ? やけに人が……いや、職員の人が慌ててるなぁ」


 ギルド職員が手が回らずに、走り回る姿は往々にしてよくある。勇輝が今まで経験した中では、ファンメル王国の首都でグール化した貴族が街の中に入り込んだ時と、王国と蓮華帝国の境にあるローレンス伯爵領に、氾濫現象で迷宮から溢れ出した魔物が押し寄せた時だろう。

 最近ではこの国の布瀬湊で出現した貝の魔物の討伐でもギルド職員が慌てていたのが、昨日のことのように思い出される。

 いずれにしても魔物関係の不測の事態が発生した時に、ギルド職員も冒険者たちと同じか。或いはそれ以上に動き回らなければならない。

 万が一、冒険者などが不足し、魔物が街や人に害を与えようものなら、冒険者ギルドの沽券にかかわる。そして、自分たちも街や村というコミュニティの一員なのだ。その危機に全力で当たらないはずがない。


「まさか、氾濫か何かが起きたんじゃないよな?」

「え、反乱!?」

「あぁ、迷宮から魔物が溢れ出る現象のことだよ。ほら、川が氾濫するとかいうだろ?」


 勇輝は入口からそっと中を覗き込みながら、若干の意味の擦れ違いを起こした会話をしてしまう。

 子供を脇に寄せて出て来る人とぶつからないようにしながら、勇輝はゆっくりと中へと入り込んだ。


「おい、例の準備はどうなってる?」

「まだ、納品の確認ができてません。先程、催促に向かわせました」

「アメリア第一王女の到着は明日だぞ。できませんでしたでは済まない!」

「わかってますよ。でも、こちらの本業も済ませねば問題ですから。口を動かすより、手を動かしてください。話すのは動いていない人間を注意する時と、冒険者と会話する時だけで十分です!」


 男女のギルド職員が言い争いながら依頼掲示板に、紙をどんどん貼り付けていく。何枚もの紙が貼りつけられると、即座に冒険者たちが殺到するのだが、今日は不思議と誰も近寄る気配がない。いや、正確には、近寄るはずの冒険者たちがあまりいない。

 数秒遅れて、急ぐような素振りは一切見せない冒険者が数名、依頼掲示板に歩み寄って行ったので、勇輝も子供を連れて近付いていく。


「あの、何で今日はこんなに人が少ないんですか?」

「あぁ、そりゃあ、『ふぁんめる』とかいう王国のお姫様が来るって言うんで、一目見てみたい奴らはいつ来るかわからないから、依頼を受けないでいるのかもな。俺はお祭りごとは嫌いじゃないが、流石にあの護衛も含めて人がわらわらいる中に飛び込む勇気はない。だから大人しく依頼をこなすのさ。普段はやれないような希少な依頼も今ならできるかもしれないしな」

「なるほど、ありがとうございます」

「おう、ガキのお守りご苦労さん。逸れないように気を付けろよ、兄ちゃん」


 槍を軽く上げて、笑顔を見せる青年だったが、勇輝についてきた子供の方は明らかに不満げな顔だ。このくらいの年になると、ガキという言葉一つでどこか馬鹿にされた気分になるのはよくある話だ。

 何か言おうとしたようなのを勇輝は察して、すぐに口を塞ぐ。


「んむー! むーむーむー!」

「はいはい、登録に行こうねー」


 体を揺する様にして勇輝は子供をそのまま登録窓口まで歩かせる。

 本来なら、ギルド職員がずらりと窓口に並ぶはずなのだが、今日はほとんどいない。みな、裏の方に回っては何かを出したり仕舞ったり、或いは急いでギルドの外へと走っていく。

 目的の登録窓口など、そもそも人が座ってすらいない。

 勇輝が首を傾げながらカウンターで待っていると、唯一、座って筆を走らせていた依頼報告の窓口の男性が、わざわざ席を立って近寄って来た。

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