待ちぼうけⅦ
一分ほどすると勇輝が串に刺さった団子を数本と紙の袋を抱えて、戻って来た。
「ほら、お腹が空いてるだろ? パッと食べちゃうか」
「え、え?」
何が起きているのか理解できない子をおいて、勇輝は団子を紙袋を持ったまま左手に持ち替える。
「そうだ。汚れたままで食べるとおいしくないから、手とか色々綺麗にするのが先かな?」
「え? え!?」
「はい。おてて出してー。水で洗っちゃうよー」
「あ、はい」
勇輝に促されるままに子供は手を出す。
その手に向けて勇輝は右手の人差し指を向けると、小さく詠唱をした。
「わ、わ、わ、わぁ!?」
「外の国の術を見るのは初めて? 他の国の人は、こうやって、手とか体とかを洗うこともできるんだ」
そのまま勇輝は、手首から腕へと魔法で出現させた水を動かしていく。
「えーと、どうする? ついでに顔とか体もやっちゃう? 濡れた状態にもならないから、寒くもないし」
何度も顔を上下させる子供も反応を確認して、勇輝は大きく息を吸いこむように指示をする。
「よし、じゃあ、頭の上からさっとやるぞ。せーのっ」
「うぷっ」
口を大きく膨らませた子供を見て、勇輝は一気に頭の上から下へと水を移動させていく。自分の体に本来ついていないごみや汚れとなった垢などを洗い流す魔法で、おまけに慣れてくれば使用後も濡れていない状態を保てる優れものだ。
服に着いた汚れもかなり落とせるが、流石に焼けたり破けたりしている部分は直せない。それでも、初めて見た時よりも随分と綺麗な布地が顔を出す。
「わぁ、ほんとに綺麗になった」
「……凄いな。髪もこんなに綺麗になるのか」
ぼさぼさだった髪も、濡れ烏とまではいかぬものの、艶を取り戻している。肩よりもやや下まで伸びた髪は手入れさえすれば、更に輝きを増すようにも思えた。
「よし、じゃあ、これ食べて良いぞ」
「ほ、本当にいいの? でも、知らない人から貰った物は食べちゃダメだって」
「でも食わないと死んじゃうぞ。別に食べたからって何か命令するつもりもないからな。もちろん、毒なんか入ってない」
勇輝が適当に串を選んで一つ口にする。
「――――っ」
一瞬、子供が顔を顰めるがすぐに元の表情に戻ると、勇輝の手から残っている串を両手で全て奪い取った。うずくまっていたのが嘘のような変貌に勇輝は笑いながら、紙袋も差し出す。
「こっちはあられな。いつも誰かが助けてくれるとは限らないから、大事に食えよ」
「え、お兄さん。もう行っちゃうの?」
「すぐにじゃないけど、用事があるからね。待ち合わせもあるし」
そう言うと、団子を一息で平らげた子供は困った表情を浮かべる。
「でもでも、そうしたら頼る人はいないし、お金もないし」
「そうだなぁ。子供でもお金が稼げる方法があれば――――」
そう簡単に小学生ができるような仕事など見つかるはずがない。だが、勇輝はその仕事を既に経験している。ちょっと努力すれば何とか食いつなげる方法を。
「なぁ、組合って知ってるかい?」
「ぎるど?」
「そう。物や薬を作る時には材料がいるし、魔物が出たら駆除しなきゃいけない。そういう誰かが困っていることを代わりにしてあげることで、お金を得ることができるんだ。お金があればご飯にも困らなくて済むし、温かい寝床で休むこともできるようになる」
一文無しでこの世界に来てしまった勇輝だったが、ゴブリン退治に訪れていた冒険者一向に助けられ、こうして生きて過ごすことができている。
お金を渡して子供を助けることはできるが、大切なのは自分の力で生きていける力を身に着けさせることだ。
「うん。それなら、行く」
「よし、さっそくギルド――――はどこだ?」
「お兄さん、私より大きいのに迷子なの?」
「ち、違うぞ。俺もこの街に来たばかりで知らないことが多いだけだ。それに困った時は人に聞くという手段がある。すぐに聞いて来るから」
そう告げると勇輝は通りに出て道行く人を呼び止めると、ギルドの場所を質問し始めた。
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