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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第22巻 からくれなゐに染まる腕

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待ちぼうけⅤ

 お腹の音など、ただの音に過ぎないはずだ。しかし、体の中から響くと、何故か体の力が抜けて行く気がする。するとどういう訳か足も重く感じてしまう。匂いの源を求め、視線が左右へを往復する。

 人混みの僅かな隙間から覗く看板や旗、湯気を追いかけていると、いつの間にか検問所の近くまで戻ってきていることに気付く。


「さて、ここいらで何か食べるとしようか。どうだ? 折角、普段来ない所に来たのだ。互いに合わせて、好きな物を食べられないというのもつまらんだろう。荷物もすぐには届かぬし、それぞれで食事をしてくるのは。ここまで警護の武士たちがいれば、こちらに火の粉が降りかかることも、そう簡単にはあるまい」

「そうですね。集合はどうしますか?」

「では半刻後に、そこの検問所の脇で落ち合おう」


 勇輝はそれに頷くと周囲を見渡すようにして食事ができる店を探す。

 ここに来るまでに見かけたのは、そばやうどん、天ぷらに寿司とかなりの種類の店が並んでいた。おまけに、よく見るとその値段もそこまで高くない。特に魚を使っている寿司は、勇輝の想像以上に安く。果たしてそれで商売がやっていけるのか、と疑問に思わずにはいられない。


「(でも、生の場合、アニサキスとかが怖いからなぁ……念の為、そういうのは避けておこう。それに、桜のお父さんを助けるために来ているのであって、観光じゃないんだよな。ちょっと、気を引き締めないと)」


 勇輝は自分の両頬を叩いて、一番近くにあったそば屋へと足を踏み入れた。さっと平らげて、桜たちへ何か持って帰ることができる物を探す方に時間を費やそうという考えだ。


「(浄化、とかになるとお清めの塩? でも、桜のお母さんは巫女さんだっていうし、きっとそういうのは常備してるよな。ひいばあちゃんにもう少し、そういうことも聞いておけばよかった)」


 立ち食いのカウンターと座れるテーブル席。さらに奥には畳の座敷があったが、勇輝は迷わずカウンターの方を選んでかけ蕎麦を注文する。代金を先払いで渡すと、店員の注文を料理人に伝える気持ちのいい声が店の中に木霊する。

 隣で温かい湯気が立ち昇る蕎麦に思わず視線を向ければ、男がこれでもかというくらい巨大な海老の天ぷらを箸でつまんで食らいつくところだった。


「(美味そうに食うなぁ)」


 思わず口の中に涎が溢れ出て来る。慌てて目を逸らすが、今度は耳にサクッという衣の噛み砕かれる音が届き、脳から空腹であるという信号が追加で全身に送られた。


「お待ちっ!」

「――――いただきますっ!」


 目の前に置かれた器を前に、神速で手を合わせて軽く頭を下げると、一気に箸で口の中へと書き込む。

 すると隣で海老を食っていた男が目を丸くしながら声をかけて来た。


「お、兄ちゃん、言い食いっぷりだな。でも、そんな量で足りるのか?」

「大丈夫です。それにお腹が空いたら、別の食べ物もありますし」

「はっはっはっ、そりゃそうだが、そんなこと言ってるとここのおっかねえ大将が嫉妬するぞ」


 そう言われて、勇輝がすぐ近くでそばを茹でている料理人の方を見る。

 頭に布を被った男が振り返ってニヤリと笑った。


「はっ、一度食ったら逃がしゃしねーよ。繋がった縁は細く末永くよろしくどうぞってなぁ。また、この街に来たら食いたくなるから覚悟しとけってんだ!」

「おう、そうだそうだ。もっと言ってやれ。俺なんて毎日通ってるぞ」

「お前さんはカカアにもう少しましな飯作ってもらえるよう、頭下げておけ。昨日も夜遅くまで飲んでただろうが」


 男気溢れる小洒落た言い回しに客の何人かが囃し立て、それにまた大将が返事をする。

 先程までは通りの方が五月蠅かったのに、今では店内の方が騒がしいくらいだ。勇輝はその声を聞き流しながら、温かいつゆを一気に飲み干し、大きな声で大将と呼ばれた男へお礼を言って店を出て行く。

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