待ちぼうけⅢ
高台へと向かう道すがら、人が少なくなってきたのを見計らって、勇輝は僧正に問いかける。
「そう言えば、僧正さんが出会った人で、自分のように不思議な能力をもっていた人とかいるんですか? 未来視とか過去視とか」
「うむ? 何だ、昨夜のことが気になるのか? それなりにはいたぞ。特に多かったのは幻術に対して耐性のある者か。だが、お主のような眼となると――――千里眼を有している人物がいるとは耳にしたことがある。嘘か真かは知らんがな」
緩やかな坂を上りながら僧正は息を乱さず答える。
「透視や他人の視界を覗き見るといった力をもつ者もいたという。もちろん、他の者より見えにくい妖や幽霊を見る、というのもな。しかし、何度も言うが、お主のように様々な色の光として物を認識するというのは、我も長く生きてきた中で初めてだ」
「僧正さんが知らなくて、元々こちらの世界にいた人で知っている人がいるとなると、こちらの世界にしか存在しない魔眼?」
勇輝が呟くと、僧正が足を止めて振り返る。
「待て、今の口ぶりだと、まるでその眼を知っている人と出会ったことがあるように聞こえるが」
「はい、今までに二人。一人は詳しくは言えませんが、第四位の保持者と俺を呼んでました。使い過ぎれば戻れなくなる、とも」
ファンメル王国の近くにある山の地下。そこに眠っていた年老いた赤竜は、確かに勇輝に対して、そのような発言をしていた。ドラゴンがどの程度長く生きるのかは知らないが、もし僧正と同じように数百年の時を生き永らえているとすれば、勇輝以外の同じ魔眼使いに出会っている可能性は否定できない。
そしてもう一人は、赤い髪をした少女アリス。不法入国をしている可能性のある怪力少女で、勇輝を片手で空中にぶん投げるなんてお手の物。大鬼に殴り掛かって吹き飛ばすなんてこともやってのける武闘派だ。
「(……ドラゴンもあの子も同じ赤だったけど、まさか、ドラゴンの子孫で人間に変化しているとか? いやいや、あり得ないだろ)」
アリスを魔眼で見た時には三色の光が見えていた。白、赤、そして、緑。
ここ数日で緑色の光を纏っている者の中には、変化の術を使っている者が多くいた。それを考えると勇輝の予測も間違っているとは言い切れない。
下手するとドラゴン一家に喧嘩を売っていた可能性があると気付いた瞬間、全身の毛穴が開いて、冷や汗が噴き出て来るのを感じた。
再び前を歩き始めていた僧正は、急に顔色が悪くなった勇輝には気付かずに返事をする。
「この世界だけなのか。それとも体質や血によるものか。それはお主だけを見ても推測は出来ん。もし一つ考えられるとすれば、お主の曾祖母である巫女長の未来視。あれと同系統、或いはその変化した眼や能力であるというものだな」
「未来視の同系統、変化形?」
勇輝は眉を顰めて、僧正の言葉を繰り返す。
心当たりがないわけではない。人が纏っている光は、肉体が動くよりも先に光が動き、それを追うかのように肉体が動く。戦闘ではそれを先読みすることで今まで生き残ってくることができた。ただし、その光と肉体の動きの差は、強敵であればあるほど少なくなり、見切るのが難しくなる。それが未来視の難易度を上げていると考えるのならば、確かに僧正の言う通り、未来視から派生した魔眼と言えなくもない。
「少なくとも、その正体を知っている者がいるのは確からしい。ならば、いずれ眼の真実に辿り着くことができるやもしれんな。――――ほれ、高台に着いたぞ。見渡してみろ、洞津の街を」
「布瀬湊よりもかなり広いですね……」
桜と婚約するための結納品を入手しに行った港町は、崖に近い山に囲まれた田舎で見るような小さな漁港だった。対して、今いるのは国内と国外を結ぶ唯一と言っても過言ではない日ノ本国の玄関となる街だ。当然のことながら規模が違っていた。
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