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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第22巻 からくれなゐに染まる腕

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待ちぼうけⅡ

 恐怖に心を侵食されながらも、やはり睡魔には勝てなかったようで、気付いた時には洞津に到着していた。

 馬車は既に宿の近くにある繋ぎ場に止まっており、僧正が勇輝の肩を掴んで揺すり起こしたところだ。


「ふっ、あれだけ言っておいて、しっかりと寝ておるではないか。呑気なものだ」

「こ、これは、その――――」

「よいよい。寝る子は育つというしな。休む暇などないくらい動いていたのだから、寝ることに文句は言わんさ。」


 僧正は笑いながら荷台を降りる。


「既に今日の宿は取ってある。問題の積み荷は明日届く予定らしい」

「そうですか。それまではどうしますか?」


 勇輝は起きると、慌てて僧正を追う。その際に、肩から首にかけて痛みが走るのを感じた。

 昨夜の僧正の予想がまさか本当に当たるとは思っていなかったので、思わず顔を顰めそうになる。軽く肩を回しながら歩いていると、僧正は苦笑いしながら口を開いた。


「前にお主に聞いた話だと、洞津では船を降りてすぐに海京に運ばれたのだろう? それでは、あまりこの辺りの土地勘は無いと見た。それならば、一通り案内してやろうと思ってな。何かあった時に街の構造を知っているかどうかで雲泥の差が出る」

「なるほど、港町だと海の魔物や津波とかですか?」

「こちらでは地震こそ起こるが津波が起きた話はあまり聞かんな。それよりも魔物の方が面倒だろう。船着き場から、街までに距離があるのも、海の魔物を警戒してのことだ。尤も、ここ数年はかなり落ち着いていると聞く」


 逆に十年以上前に遡ると、小規模とはいえ魔物が港に入り込んで暴れるという事件が毎年発生していたのだとか。北御門家の隆二という青年がここに赴任してから、そう言ったことが起こらなくなったというが、その方法は意外なものだった。


「――――水中で音を鳴らした後に攻撃?」

「あぁ、水中へ術式で船が通る音や金属音に近いものを流した後、圧縮した空気や雷の術をこれでもかという程放ったとか。恐らく、海中の魔物にその音がすると攻撃が来ると学習させたのだろうな。今でも時々、やっていると聞く」


 海から大きな水柱が上がる様が町人たちには人気らしく、今では観光イベントの一つにまでなっているという。事実、検問所の掲示板には行われる日時だけでなく、その光景が見やすい場所まで書かれている。


「まずは高台まで登って、全体像を把握。その後は東から西へと大通りを抜けてみよう。その途中でいい店が見つかれば、腹ごしらえだな。何、栄えている街だから食べ物には困らんだろう」

「わかりました」


 多くの人混みの中を進みながら、僧正が指差した高台へと目を向ける。

 以前、訪れたことがある港町は、斜面に向かって段々畑のように町がつくられていたが、この洞津では山の裾野の部分までが街で、それより上にはあまり家は作られていないようだった。


「へー、あんなところに高台が……あそこからも、もしかしたら、その水柱とかが綺麗に見え――――あたっ!?」


 顔を見上げていたせいで、前方への注意が疎かになっていた。正面から来た人と肩をぶつけてしまい、思わず当たったであろう人へとすぐに振り返る。


「すいません。大丈夫でしたか?」

「――――っ!」


 振り返った先には、ぼさぼさの伸ばし切った黒髪しか見えず、目すらどこにあるかわからないような人がいた。着ている物もみすぼらしく、所々が焦げていたり破けていたりしている。


「あの――――」


 一瞬、その姿に驚いて息を呑んだものの、改めて呼びかける。すると、その人物は何かに怯えるように人混みをかき分けて行ってしまった。

 道行く人がその人物に驚いて仰け反る。あっという間にその人物は遠退いて行ってしまい、勇輝は肩を落として正面を向く。


「どうした?」

「いや、人とぶつかったので謝ろうとしたら、驚いて逃げてしまったので」

「そうか。あまり気にしても仕方ない。この人ごみの中ではどちらにも責任はないだろうよ」


 僧正はそう告げると、一度、勇輝が見ていた方を確認する。しかし、既に相手は走り去った後なので、僧正にも見つけることはできなかった。

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