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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第22巻 からくれなゐに染まる腕

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夢現Ⅴ

 勇輝は間合いを計りながら敵の動きに違和感を覚えていた。


「(前に戦った時よりも……強い?)」


 以前は力任せ、早さ任せで攻撃してきていたが、今は刀で中心を割ってきたり、細かな動きで翻弄してきたりと詰将棋のように攻め入って来る。


『当たり前だろ。そんな状態で相手できるのなんて、知能のない小鬼が精々だ。人間相手、しかも鍛錬を積み重ねて来て、実戦も経た奴には到底敵わないのはわかるだろ?』


 心刀は笑い声と共に、勇輝へと言葉を投げかける。それは僧正と言っていることは同じなのに、より深く勇輝の心へと突き刺さった。


「――――だったら実戦経験を積むしかねぇってか?」

『流石、俺だ。俺の考えていることがよくわかってるじゃないか』

「人に言われて咄嗟に対応策を練り出すあたり、本当にそっくりで頭に来るよ。マジで」

『目的を理解してもらったところで、再開と行こうか。何、夢の中じゃ、案外時間は流れないもんだ。ゆっくり戦っていけ』


 その言葉を皮切りに再び刀を持った敵が動き出した。

 互いの刀が切っ先を越えて、交刃の間へと近づいていく。一瞬だけ、動きが膠着した後、敵の切っ先が自分に向けて近付いて来るのが見えた。


「(突きか? だが、それなら鎬で逸らし――――)」


 勇輝の腕が左へ逸らそうと動き始めた瞬間、相手の刀が急加速と共に勇輝の刀を弾き、そのままの勢いで水月へと突き刺さった。


『擦り込みながらのただの平突きだ。肋骨の間から心臓や肺へと突き刺さるのは、なかなか痛いぞ』


 蹴飛ばされて突き刺さった刀を抜かれながら地面を転がった勇輝は、咳き込みながら立ち上がる。本来ならば、血を吐き出して息絶えるところだが、ここは夢の中。いくら傷ついても、無傷のままだ。ただただ、殺されたという恐怖だけが精神と記憶に刻まれる。


「(こんなの続けてたら、発狂したくなる人もいるよな)」


 心刀を手に入れても、帯びずにしまっておく人がいるという理由にも納得だった。だが、強さを少しでも求める人間からすれば好都合。人を安易に殺すわけにはいかない世の中で、現実に近い形で遠慮なく刀を振るえるのは大きな利点だ。


『流石に慣れたか。まぁ、その方がこちらも楽だ。ほら、さっさと次を始めろよ』

「お前、一言言わせろ。俺はそんなに性格悪くないぞ」

『馬鹿野郎。俺も他人だったらこんなこと言わねえよ。自分相手だから遠慮なく言えるんだろうが、大体、水泳やら何やらでも常に頭ごなしに言われてないと無意識にサボるだろうが』

「……無意識のことまで把握されてるのかよ」


 思っていた以上に高性能な心刀の把握力に、勇輝は思わず身震いする。

 もしかすると、自分の忘れている何か恥ずかしい過去すら知っているのではないかと疑ってしまうくらいに。


「――――ちっ!?」


 そんな呑気なことを考えている暇など与えないとばかりに影は襲い掛かって来た。今度も刀が振れあった瞬間に圧をかけて来る。勇輝も負けじと押し返すと、不意に相手の刀が上へと抜けて空振ってしまう。

 気付けばいつの間にか右手を斬られていた。


『押されたから押し返すはガキの発想だ。押されたからこそ引くのも立派な駆け引き。自分勝手なのは構わないが、最低限の読み合いくらいは出来てもらわないとな』

「五月蠅いな。次だ、次」

『……そうか。じゃあ、これはどうだ?』


 すぐに傷が塞がり、元に戻った右手を軽く振って、勇輝は再戦を要求する。

 それに一瞬だけ心刀が戸惑った沈黙が伝わってきたが、すぐに影は動き出した。三度、中段の構え同士で近寄った二人だったが、今回は勇輝が先に仕掛けた。鋭く半歩踏み込んだと見るや影は半歩下がる。即座に勇輝は切っ先を相手の刀の下へと潜らせて即座に左へと移動して小さく振りかぶった。


 ――――ガキンッ!


 右の籠手ではなく、一度、相手の刀の峰へと振り下ろす。すると甲高い音を響かせて刀同士が激突する。その衝撃で敵の手が完全に下へと向いた瞬間、勇輝は思いきり体を前のめりにして刀を突き出した。


『突きをやられたから突きで返す、か。本当に子供みたいな奴だ。相変わらず自分勝手なのも腹が立つ』

「御託は良いから、どんどんやれよ。試行錯誤、トライアンドエラーでやらないと駆け引きなんてわからんからな」

『……なら、お望み通り休む間もなく戦わせてやるよ』


 売り言葉に買い言葉。まるで喧嘩の一幕のようだが、不思議と二人の言葉には棘が無く、むしろ楽しんでいる節すらあった。

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