未来に向けてⅤ
隆二と隆道の周囲をひりつくような空気が満たす中、恐れることなく職員は近付いて声をかけた。
「アメリア第一王女一行の艦隊が見えました。予定通りの場所への誘導でよろしいでしょうか?」
「来たか……! 確か護衛艦を含め五隻だったはずだな? 既に朝から場所の確保は出来ている。手筈通り頼む」
「わかりました」
隆二は去っていく職員を目で追いながら隆道へと問う。
「お爺様」
「わかっておる。この目でしっかとその船を見に行くわ」
後ろで手を組みながら、隆二の返事を待つことなく歩き出す。
慌てて隆二もその後を追って、外に出ると紺碧の海原が飛び込んで来た。すぐに目を凝らして水平線の方へと向けると、はるか向こうに旗の翻る船が目視できた。
「――――あれが、日ノ本国ですか」
そして、船からもまた日ノ本国が見えていた。
甲板に姿を現したアメリアは、乱れた長い水色の髪を耳へとかけ直し、目を細めて微笑む。何しろ、国外に出るというのは自身の能力のせいで、政治的に様々な問題を生むことは幼い頃から耳が痛いほど聞かされてきた。そんな自分が初めて国外の地を踏み、目で見て、空気を吸うことができることに喜びを感じずにいられるはずがない。
瞳の中に満天の星を散りばめたかのような光を灯して、洞津の港を見つめる。
「素敵ですね。緑だけでなく、赤や黄色に染め上げられた山というのも素敵です。王国にも色を変える葉はありますが、あそこまで鮮やかなものは久しく見ていない気がします」
「アメリア様、潮風は体に障ります。加えて、お召し物も傷みやすいので、まだ中におられた方がいいかと。それに日ノ本国は友好国とはいえ、どの国であっても一枚岩ではありません。今回の訪問を快く思っていない勢力もいるはずです」
「あら、王族直属の護衛部隊であるあなたたちがいるのです。一体、何の心配があるんでしょうか?」
アメリアは男の忠告を気にすることなく、船首へと歩いていく。
両脇には魔法使いたちがずらりと並び、海からの魔物を警戒していた。海賊たちが暴れていた時代ならば大砲などが備え付けられている場所には、先端が尖った長い棒状のもの。それこそ槍の柄を大人の男が両腕で抱えるくらいまで太くしたものが配置されていた。
「それに急造とはいえ、新型の砲撃専用魔法杖を全艦に配備しているのでしょう? 開発者曰く、『クラーケン程度なら一分と経たずに討伐できる』とか」
「それは補充する魔力を度外視して使用した場合です。アメリア様、お願いですからお戻りを」
再三、注意を促しているのは王族直属護衛部隊のリーダーで、名をケアリー・ホワードと言う。
オールバックにしたブロンドの髪を潮風に乱されながらも、アメリアのやや後方を歩いて周囲を警戒していた。部下たちと彼で十二名いるのだが、今は下船の支度をしている為、アメリアの護衛はケアリーと数名しか今はいない。
「アメリア様もお年頃なんですよ。ケアリー隊長も多めに見てあげてくださいよ」
そんな彼の後ろから赤い髪の少女が声をかけた。
「……アレックスの娘か。悪いがアメリア様の護衛に関する一切の権限は私にある。黙っていてもらおう」
「おぉ、こわっ。流石、父さんが色々な意味で堅物って言うだけあるな。めっちゃ真面目だ」
「……誉め言葉として受け取っておく」
「うげっ、聞こえてた!?」
ケアリーの地獄耳に頬を引き攣らせたのは、魔法学園に通う貴族の娘で桜の友人の一人、マリーであった。そんな彼女の袖を水色の髪の少女が引っ張る。
「マリー、王族の関係者は基本冗談が通じないかも。ユーキみたいに反応してると、海に投げ捨てられるよ?」
同じく桜の友人で魔法学園を飛び級している天才少女、アイリスが小さく首を横に振った。
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