未来に向けてⅣ
「この国に……いや、この世界に色々と面倒なことが起ころうとしている。この前の復活した土蜘蛛しかり、封印が解けかけている塚しかり――――」
隆道は真剣な眼差しで、受付を済ませる冒険者たちの姿を見渡す。残念なことに彼のお眼鏡に叶う人物はいなかったようで、少しばかり長いため息をついた。
「――――海の向こうでは魔王が復活をするという話も飛び交い始めているのだとか。こりゃ、家に引き籠って槍を振っている場合じゃないわ」
「お爺様。まさかとは思いますが、魔王と一手手合わせ願う、などとは言い出しませんよね?」
「何を言っておる。世界を危機に陥れる悪鬼なれば、名乗りなど必要なし。闇討ち、奇襲上等に決まっておろう」
「私は、そういうつもりで聞いたわけでは……。いえ、お爺様に聞いた私が間違っていました」
頭痛がする気がして隆二は額を手で覆う。そんな孫の様子など露も気にせず、隆道はぼそりと呟いた。
「さっきの話に戻るが、数日前に西園寺の方から連絡が来た。封印塚の方は術士たちで修復を進めて、何とかするようだ。だが――――」
視線を左右に動かした後、隆道は僅かに下がって隆二に何とか聞こえるくらいの声で呟く。
「この前、何者かが不法入国をしたらしくてな。その際に、どうやら変な術を使ったらしい。それがきっかけで地脈が乱れ、封印塚にも影響が出たんだとか」
「既に報告は隆三からも聞いています。恐らく、蓮華帝国の李家の者でしょう」
「ほう……青龍を操る貴族の家の者か。なるほどなるほど、それならば神気で地脈が乱れるも道理だ。復活したならば、真っ先に駆け付けようと思っていたのだが、それにかまけて賓客にもしものことがあってはいかんからな。そこは東雲の奴が南条と協力して上手くやるだろう」
封印塚の件については、東雲家と南条家が対応し、使者の護衛は北御門家と西園寺家、平源院直属部隊が対応する。それが水皇、水姫が下した命であった。故に隆道もその命に逆らうわけにはいかず、動くとなれば、こちらに来ざるを得ない。
「しかし、今回の封印塚はなかなか厄介な所だったはず。本当に大丈夫なんでしょうか?」
「あぁ、確か人と似た外見の鬼でありながら、その膂力は大鬼をも凌ぐのだとか言い伝えられているものだったな。名は――――い、い……駄目だ。思い出せん。まぁ、何かあれば思い出すわい」
「いや、何かあってからでは遅いのですよ。今回の使者はファンメル王国からです。それも貴族から選ばれた使者などではない、王族の使者です」
ファンメル王国は、建国した時から日ノ本国と関係があり、国交も早期から樹立している間柄だ。つまり、使者が来た稀な例の九割がファンメル王国のものである。それでも今まで王族が自ら訪問した例は未だない。
「本来なら歓迎すべきことだがな。ここに来る王族が誰かを西園寺から聞かされていれば、誰もが顔を顰める。それはお前もわかっておろう」
隆道の表情が険しくなり、より一層皺が深く刻まれる。
「第一王女のアメリア。彼女のもつ能力は――――」
「――――自身の行ったことがある場所への転移を可能とする術式。そんなものを使える人物を受け入れて、もし悪用されればどうなるか。誰であっても容易に想像はつく」
大船団を率いずとも、相手に気付かせずに一方的に兵を送り込むという反則級の奇襲を受ける可能性がある。そうなれば、有無を言わせず本土決戦。しかも、退路がない敵兵は文字通り死力を尽くして攻め込んでくる。そうなれば、いくら四方位貴族の一角である北御門家とその家臣団でもどこまで戦えるか。隆道を以てしても推測できないでいた。
その危険を孕んでいるにも拘わらずアメリアを受け入れたのは、水皇、水姫に何かしらの思惑があったからか。或いは巫女の結界で防ぐことができる確信があったからか。
少なくとも隆道は前者だと睨んでいた。そうでなければ、ここまでの兵を招集する理由がないからだ。
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