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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第21巻 疑惑の白面狐

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未来に向けてⅠ

 枝双以外の孤面族が一掃されてから三日後。

 朝凪真行の意識が戻った。栄養失調に加え、肋骨が三本折れ、腹部を中心に打撲による内出血が多数見られ、一歩間違えれば死んでいたところだった。

 目を覚まして真っ先に呼ばれたのは、村長の張継と家臣団を纏める蜻蛉。何としてでも聞かなければならなかったことは、どうして孤面族に攫われてしまったかだ。

 掠れた声でありながらも、ゆっくりと話す真行の言葉は弱々しく感じる一方で、理路整然としており、意識がはっきりしていることを示していた。それ故に、彼から語られた言葉は張継たちはもちろん、彼の両親ですら、絶句せざるを得なかった。


「つまり話を纏めると、『攫われた第一の要因は孤面族の変化するところを見てしまったこと』。そして、もう一つの要因は『自ら入れ代わりを志願したこと』か」

「はい。どうしても、自分には夜駆けの儀を成功させることも失敗させることもできませんでした」


 失敗することができない。その理由は幾らでも予想できる。一人前と認めてもらえないだけでなく、自分が好いていた女性と添い遂げることが出来なくなってしまう。尤も、その重圧に押しつぶされそうになりながら、若衆は成長するのだと多くの者は言う。


「しかし、わからん。何故、成功させることができないなどと言うのだ?」

「決して叶わぬ恋を……諦めきれなかったから、でしょうかね」

「それは、この村にいない女子を、ということか?」

「はい、この村には南条派と東雲派の家臣団しかいませんでしたから」


 南条家の家臣団と東雲家の家臣団とはいえ、女子がいれば、それはどちらの派閥関係なく姫立ちの儀の対象とされる。それは四方位貴族間の友好を深めるきっかけにもなっているからだ。

 水皇と水姫が過ちを犯さないよう監視しながら、四方位貴族同士もまた互いに監視をしている。だが、必ずしも常に敵対的であるという意味ではない。むしろ、長い間、四方位貴族は互いの立場と役割を守りながらも、日ノ本国の発展のために協力をしてきている。

 そのわかりやすい例として挙げられるのが、北御門家と南条家だ。

 北御門隆三は国外の迷宮に潜り、迷宮産の武器を南条家に引き渡すことで新規武器の開発に役立てている。開発が成功すれば、北御門にもその武器は真っ先に供給される手はずになっていることだろう。

 父である真達は、腕を組んだまま息子の言葉に耳を傾けていた。そして、瞑っていた目を開くとぼそりと呟く。


「夕凪の娘か」

「……はい」


 同じ南条家の家臣団である夕凪家は、元を辿れば朝凪家と先祖を同じくする遠い親戚。幼い頃から何度も会う内に、恋心を抱いていた。

 しかし、夕凪家は西園寺家と南条家が管理する南西の村にいる。当然、この村にいては儀式に参加したところで彼女と結ばれるはずがない。


「まったく、そういうことは早く言わんか……」


 不機嫌そうに真達は呟くと、おもむろに立ち上がって部屋を出て行ってしまう。それを張継が止めようとするが、あろうことか蜻蛉がそれを止めた。


「あいつにも考えがあるようです。少し放っておいてやってください」

「……わかった。そこまで言うなら、話を聞くのを優先しよう」


 張継は、真行に続きを話すよう促した。

 真行は孤面族の目的を、自分たちの居場所が欲しいことだと聞いていた。それならば姫立ちの儀に選ばれていない家庭の女性と婚姻関係を結んで、日ノ本国の民として生きる道があると説明し、その際に必要な用紙を自分が提供するという話になったのだとか。

 一見すると善意による行動に見えるが、実際は国家転覆に繋がる危険な行動になってしまった。そのことを真行が理解したのは、鬼門の迷宮にある彼らの拠点に辿り着いてすぐのことだった。

 あまりに軽率な行動にどうしたものかと張継は呆れると同時に、真行の今後を心配してしまう。最低限、形として鞭打ちと謹慎処分は下す予定でいたが、それでも、お(かみ)がこの件を危険と判断して、さらに重い刑を要求する可能性は大いにあり得た。

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