因果応報Ⅷ
「さて、自己紹介はもういいでしょう。そろそろ、そいつも回復し始めているようですし、逃げられる前に決着をつけておかないといけませんから」
ゆっくりと体を引き起こす金囲を見て、九重は汚物を見るかのように口元を隠して目を細める。
「ま、まだだ。まだ、俺の力はこんな物じゃ……」
「では、現実を突きつけて心も折っておかねばいけませんね。不意打ちで怪我を負わせたとはいえ、私と妹の失った尾の数は計五本。あなたたちの仲間の力で攻撃の威力を増加させていたとはいえ、全力でその程度ならば、たかが知れるというもの。私自身が私と同じ程度の九尾に不意打ち全力で行えば、相手の尾が全て吹き飛びますから。尤も、そんな威力の攻撃を準備していたら、流石の私も気が付きますので当たらないでしょうけどね。あなたにはその程度の劣化した能力しかないということです。まぁ、人間にしてはよく頑張ったと及第点くらいはあげましょう」
流れるように口から紡がれる九重の言葉に、金囲は歯を食いしばって立ち上がるのが精いっぱいだった。その様を見て、九重は話すのも無駄かと言わんばかりに首を振る。
「やれやれ、己の力を見誤るとは見苦しいにもほどがありますね。いい加減、力の差を理解してほしいのですが……体に叩き込まれねば、わかりませんか」
九重は掌を上に向けて、拳大の火球を作り出した。金囲が作り出していたものとは、明らかに大きさが異なるが、誰もがその火球が金囲の時よりも危険であると本能で察知する。
もう片方の手の人差し指と親指で輪を作ると、しゃぼん玉でも飛ばすように九重はふっと息を軽く吹きかけた。
――――ズドンッ!!
音が聞こえた時には既に熱波と暴風が肌に襲い掛かって来ていた。金囲の近くにいた者は、その余波を受けて地面に転がる。
次に彼らが顔を上げた時、金囲の首から上が消失していた。
「あらあら、耐えれるかと思いましたが、もう限界でしたか。もう少し苦しませてあげても良かったのに、惜しいことをしたわ」
笑顔で恐ろしいことを言ってのける九重に、村人たちはゾッとした。もし、本物の九尾の狐が相手だったならば、一体どれほどの被害がこの村に出ていたのか。少なくとも、手傷を負わせることはできただろうが、代わりに村は跡形もなく地図から消えることになるのは想像に難くない。
國明は、その危険性を理解し、真っ先に九重の前で跪いた。
「私はこの村を管理する四方位貴族の嫡男が一人。南条國明と申します。この度は、我が村を助けていただきありがとうございます」
「うーん。別にこの村を助けようとか、そういうのじゃなくて、自分を襲った不逞の輩を成敗しに来ただけなんですよねー―――って言っても聞いてくれそうにないし、どうしようかしら」
次々に國明にならって跪いていく村人の群れに、九重はわざとらしく困ったふりをする。
その意味を國明は理解していた。自分の口から言わせるな、と鋭い視線が投げかけられているのに気付いたことも一因だが、一番は四方位貴族として、万が一、国の守り神である龍神に出会った時の為の神霊相手に関する教育が大きい。
上から目線なのは当たり前。問題なのは、その言葉がわかりやすいストレートで来るか。それとも、回りくどい変化球で来るか、だ。特に後者の場合は、上手くコミュニケーションが成立すれば、最低限の見返りは保証される。
「恐れ多くも、神饌を納めさせていただければと。幸い、村では先日、収穫が行われたばかりですので」
「私、農耕神の神使ではないのですが、食べ物というのは良いですね。大地の力を吸収して傷が癒えるのも早まりますし、何より、人の作った食べ物はおいしいと聞きますから、それで貸し借り無しといたしましょう。――――ですから、その警戒を解いてくださいます?」
「これは失礼をしました」
神と言えど、理不尽を突きつけるならば反抗すべし。少なくとも、この場にいる全員がその覚悟でいた。それ故に万が一があれば、即座に攻撃に移る。その体勢でもあったことを九重は見通していたようだ。
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