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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第21巻 疑惑の白面狐

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因果応報Ⅶ

 何とか体を引き起こして、國明が金囲を探すと、既に雀蜂が倒れ伏していたところに襲い掛かっていた。

 脚や腹であっても瞬時に回復する金囲だったが、喉の一撃はまだ回復していないらしく、血が滴っている。雀蜂は金囲へ飛び乗り、さらに刀を突き立てた。


「くっ、刺さるけど、浅い。こいつの体に比べて、刀が短すぎる……!」

「雀蜂! そこを退け!」


 國明の声に顔を上げると、刀を上段に構え、刀から炎を吹き出す國明の姿があった。

 慌てて、刀を引き抜くと雀蜂は、着地のことも考えずにその場から跳んで逃げる。それを確認すると同時に國明は刀を振り下ろした。


「……馬鹿が、その程度の炎は効かんと、さっきのでわかってるだろう」

「あぁ、()()()()効きにくいだろうな」


 肌の表面を炎が流れていくのを感じながら金囲は笑っていたが、いつの間にか國明が懐に潜り込んでいることに気付き、引き攣るような声が漏れる。


「だったら、()()()()()()()()()()()!」


 國明は雀蜂の刀が刺さっていた喉へと自身の刀を差し込むと、その状態で炎を放った。傷口と刀の間から炎が噴き出すが、それが國明を傷つけることはない。國明は左手で金囲の毛を掴むと、引っ張って右手を奥へと突っ込む。

 外から炎を当てても熱は至る所に逃げる余地がある。しかし、ここまでやってしまえば逃げるところなどありはしない。刀では届かなかった傷があったであろう場所にも炎は容赦なく突き進み、やがて食道まで達した。


「がああああっ!?」


 口と鼻から紅蓮の炎を吐き出し、見悶える金囲。体を転がし、何とか國明を振りほどこうとするが、そんなことでは彼も手を離さない。七転八倒して、振り回されながらも炎をより強く放出しようと叫ぶ。


「見ろ! 九尾の色が変化していくぞ!」


 下手に近づけばぺしゃんこにされる。金囲が動きを止めるか。國明が振りほどかれるかした時の為に、機を伺っていた内の一人が指差した。

 白く美しい光を放っていた九つの尾が、急速にその輝きを失っていく。


「(再生に力をかなり割いているようだな。このまま行けば、かなり弱らせることができるはず――――!?)」


 勝機を見出した國明だったが、それは時期尚早であった。不意に金囲の前脚が迫って来て、國明を首から引き剥がす。

 耐え切れずに足で前脚を蹴り飛ばしながら、刀を引き抜いて國明は何とか離脱する。どうやら、前脚は狙ってやったというよりも余りの痛みに、その個所を抑えようとした結果から来る動きだったらしい。國明が離脱した後も、必死に喉を抑え痙攣していた。


「よし、今なら攻撃し放題だ。かかれ!」


 國明の号令の下、大勢が金囲に向かって走ろうとする。しかし、それを止める声が響き渡った。


「みなさん、少し待ってください!」

「……先程助けてもらった手前、あまりそちらの言葉を無下にはできない。だが、このまま機を逃せば、村の被害に繋がる。相応の理由が無ければ、攻撃をやめるわけにはいかない」


 國明が説明を求める視線を桜に送る。すると桜は自身の右側。何もない虚空を見つめた。


「――――ここで逢ったが百年目。盲亀の浮木、優曇華の花などと人は言うようですが、確かに確かに。憎き相手を探し求める立場になって見れば、短い日々もそれだけ長く感じるものですね」


 声が響くと同時に、蜃気楼のように空間が歪む。真っ赤な地の布に金色の刺繍の着物。その文様は燃え上がる焔の如く。冷たい風が頬を撫でるこの場であっても、見ているだけで熱さを感じてしまうと錯覚する。

 だが、その美しい衣装ですら霞む程の白銀の長い髪に容姿の整った切れ長の目。そして、何よりも目立つのは背後で輝く()()()()


「あ゛、あ゛ぁ゛……!?」


 喉を痛みに苦しんでいた金囲も流石に、その存在に気付き、目をこれでもかと見開いた。


「私の姿を借りておいて、随分と無様なお姿ですこと。ですが、盗人にはその這いつくばった姿がお似合いですわ」

「まさか、この方は……?」


 金囲を煽るその言葉から何かを察した國明。その戸惑いと疑念の籠った視線は、助けを求めて再び桜へと注がれる。


「恐らく、そちらの方が化けた大本。神獣の九尾の狐さんです」

「やだもう、私と桜ちゃんの仲じゃない。九重って呼んでちょうだい。もちろん、偽名だけど」

「――――改め、九重さんです。でも、私以外が呼ぶと機嫌を損ねるかもしれませんので、せめて、様をつけるのがよろしいかと」


 桜に頬ずりする神獣。或いは大妖を見て、國明は勿論のこと、その場にいた大人から若衆まであんぐりと開いた口が塞がらないでいた。

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