因果応報Ⅵ
金囲が放ったのは、オレンジの球体。傍から見れば、それは火球と言って間違いではないのだろうが、焚火の様に下から上へと酸素を供給されて、二酸化炭素と共に上へと流れる火ではない。
むしろ、全方向に等しく熱を放つ太陽のような球体。エネルギーの凝縮体という点では、勇輝の火魔法を付加したガンドに近かった。
國明にとって幸運だったのは、この球体の威力が自身の防げる範疇を逸脱していなかったこと。不運だったのは、この球体を押し留めておけるだけの力を持続できないだろうことだ。
「ぐっ……!?」
「ははは、意外と粘るな。本物の九尾の奴を吹き飛ばした攻撃だ。全力でないとはいえ、その後ろの家が一瞬で炎上、崩壊する程度には力を籠めている。ほら、力を出せよ。そうしないと後ろの奴らが全滅だぞ」
火球の後ろから気を更に送り、押し込もうとする。國明の足が地面を削り、十センチ、ニ十センチと溝を作り始めた。
背後では女子供を避難させようと騒ぐ声が聞こえるが、なかなか上手く行っていない。外に出れば一撃で殺される可能性もある。それならば、中にいた方がまだ安全だ。だが、このまま火球を防ぎきれずに國明が力尽きれば、屋敷諸共焼き尽くされる。
炎の向こうでは、この村の勇士たちが己の全力で攻撃を加えているが、金囲に攻撃を中断させるだけのダメージは未だ与えられていない。
火球が近付き、塀の内側へと國明が追いやられた。すると、腕にかかる負担は減ったものの、塀自身やその上の空間から異音が響き始めた。
「くっ、結界が削られてるか。後、どれくらいもつか」
最初の突き出しと違って、國明はただ腕で心刀を支えるのみ。純粋な炎の放出だけでは、もう止めていられるのも限界と悟る。屋敷内にいる人間をどのタイミングで、どう避難させるか。そちらに意識が偏りかけた時、金囲の悲鳴が響き渡った。
「俺たちの家族に、手ぇ出すな!」
雀蜂の渾身の突きが、金囲の首へとざっくり食い込んでいた。
「はっ、さっきの攻撃を喰らった所は、完全に塞がってないみたいだな。更にこれは、どうだ!」
ぶら下がった状態から、腕と腹筋の力で無理矢理、足を金囲へとかける。そして、ただ引き抜くだけでは飽き足らず、傷口を抉るように刀を捻った。
顔にドボリと血が飛び散るが、雀蜂は気にせずに地面へ着地する。今度は右足に走り寄ると、そのまま再び突きを放った。
「赤桐の次男坊、やるじゃねえか。こりゃ、俺たちも負けていられねえぞ!」
どこからか声が飛ぶと、金囲の左足が地割れに巻き込まれる。上半身を支えきれずに顎を地面へと付けた金囲。その瞬間、僅かではあるが國明の腕にかかる負担が減少した。
「ぐっ、これでもまだ足りないかっ!?」
しかし、どれだけ気張ろうとも火球の侵攻を押し留めるだけで、押し返すまでには至らない。万事休すかと國明が目を瞑った時、どこからか少女の声が聞こえて来た。
「『地に眠る鼓動を以て、その意を示せ。すべてを穿つ、巨石の墓標よ!』」
目前の景色が火球のオレンジから、茶色へと変貌する。
自身の炎の行き場がなくなり、逆流してきたのを見て、國明は慌てて刀を引いた。火球の行方を追って見上げると、花火ほどではないが遥か高く火球は打ち上げられ、その軌道を大きく変えている。
「すいません。村が危ないと思って助けに来ました」
「陰陽師殿のご息女か。異国の魔法なるものを学びに行っていたとは聞いたが、これほどとはな。恩に着――――!?」
突如、現れた桜に感謝を伝えようとした直後、火球が爆発を起こした。それなりに離れていたはずだが、爆風と熱波が押し寄せ、思わず顔を庇わずにはいられないほどだ。時間にして五秒足らずだったが、屋根の瓦が吹き飛ぶほどの衝撃であった。
【読者の皆様へのお願い】
・この作品が少しでも面白いと思った。
・続きが気になる!
・気に入った
以上のような感想をもっていただけたら、
後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。
また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。
今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。




