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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第21巻 疑惑の白面狐

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因果応報Ⅴ

「あぁ、人間は脆い。そもそも立っている土台が違う。それこそ地を這うお前らと、天から見下ろす俺のようにな」


 追撃の炎を口から吐き出す金囲。それを心刀で迎撃する國明。互いの炎は空中でぶつかり合い、火の粉となって消える。


「確かにそうかもしれんがな。だからと言って、俺たちがお前に敵わないなんて理由にはならないんだよ」


 國明は、再び引き絞った刀を突き出して炎を幾つも放つ。それを金囲は跳んで躱すと、今度はお返しとばかりに國明に向かって飛び掛かる。

 人間ならば、火に全身を包まれて悲鳴を上げるところだが、九尾の狐となった金囲の巨体には、その効果も薄い。皮膚の表面を焦がすだけですぐに再生してしまう。


「ちっ、面倒な……」


 國明は顔を顰めながら、その場を跳び退く。

 数瞬遅れて、國明のいた場所へ金囲の前脚が叩きつけられた。地面が僅かに陥没し、罅が周囲へと広がる。地面が大きく揺れる中、國明と入れ替わるように刀を持った人々が吶喊していく。


「羽虫の分際で!」


 尻尾を体を半回転させて、大きな尾で地面を薙ぎ払う。


「はっ、脆い脆い――――!?」


 砂利を足裏で蹴飛ばしたような感触しか残らず、余裕の笑みを浮かべて國明を探す金囲だったが、すぐに脚へと加わる衝撃に眉をしかめた。

 薙ぎ払って吹き飛ばしたはずの敵がどこにもいない。それどころか。全く同じ人間が足元を通り過ぎていったようにすら思える。


「幻影? いや、またそれとは異なる術か何かか。ええい、面倒な奴らだ。もう一度、薙ぎ払って――――っ!?」

「はっ、鳥頭が。もうさっきの技を忘れちまったみたいだな」


 別の場所から声が響く。

 また地割れを引き起こした張本人を捉えて、金囲が牙を露にして吼える。


「いい加減に大人しく死ねぇ!」


 金囲が苛立ちながらも立ち上がるが、國明たちも入れ代わり立ち代わり、攻撃を加えて、的を絞らせない。

 國明が炎を放ったかと思えば、足下を襲われる。地面が割れて足を捕られたと思えば、攻撃の当たらない人影が迫って来る。それ以外にも心刀の能力を使った攻撃が四方八方から襲ってくるので、金囲の対応できる範囲を超えてしまっていた。


「(元が人間だと思考としては、面倒な奴から叩き潰すってところか。だが、その体は個を狙い撃ちするには少しばかり大きすぎる。自慢の力を活かすならば、回復ではなく、攻撃面にその尾の力を使うべきだったな)」


 國明がそんなことを考えていると、金囲の動きが唐突に止まった。脚を斬り刻まれても回復している様子からして、死んではいない。そもそも、この程度の傷で死ぬのならば苦労はしない。


「あぁ、そうだ。なんでこんな簡単なことを忘れてたんだ。確かに鳥頭と言われても仕方ねえな」

「――――まずいっ!」


 金囲が振り返った先には赤桐家の屋敷があった。そこには避難している女子供が残っている。何しろ、このような化け物と戦うことは想定していない。もし、わかっていたのならば、別の場所へと避難させていた。


「(屋敷を取り囲む結界があるとはいえ、限度がある。大質量の攻撃や大量の気を使った攻撃であれば、壊れることも十分にあり得る)」


 國明は急いで赤桐家の前に走ると金囲の視線の先に立ち塞がった。


「ここは俺が防ぐ。何としてでもアレを止めろ!」


 金囲は口を大きく開いて天を仰ぐ。するとそこに大きな火球が現れた。しかも大岩かと思うような巨大なそれに、國明も思わず目を見開く。


「あの狐め。本当に尾の力を籠めて来るとはな。流石にこれは分が悪いか」


 ここに来て初めて手の内に汗を感じた國明だったが、握り直して深呼吸をする。単純な気の量ならば圧倒的に金囲の方が上なはず。それでも、國明は自分に勝機があると思っていた。


「(本物の九尾ならば、あの程度の攻撃で傷が付くはずもない。恐らく、模倣こそしているものの、あれは不完全。その身に貯えて置ける気の量も、そこまで多くない。推測するに、その威力も俺の心刀と同じか。やや上。時間を稼いでいる間に、他の者が何とかしてくれることを祈るか)」


 中段に構えたままで金囲の動きを注視する。脳内に思い浮かべるのはあの火球を貫く炎の槍。それも巨大な――――自身の体を超えるほどの――――規格外な物を。


「(あの勇輝という男との戦いで出した炎の刀。あれより大きい物を出せればいい)」


 己の限界を越えればいいと事も無げに宣言する。

 顔をこちらに向けた金囲に対し、國明は炎を放出するための一歩を踏み出して両腕を突き出した。

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