因果応報Ⅳ
屋敷の高さにまで匹敵するような体に、雪を思わせるような白銀の毛、地面を踏みしめる流麗でありながら屈強な四肢。そして、何より目立つのは向日葵のように広がった幾つもの尻尾。
「九尾の狐、だと!?」
「はっはっはっ! 油断したな馬鹿どもめ! 言ったはずだぞ。変化の術が得意な奴に化けたってな。俺たちは死ねば変化の術は解けずにそのままだが、こいつのは変化の術が掛かっている時に死ぬと本来の姿になるってところか」
「そのような大妖に化けるとはな。だが、それまでだ」
國明は前に進み出ると刀を構えた。刀身が僅かに緋色を纏い、空気が一変する。
すぐに金囲の背後にいた者たちは、國明のやろうとしていることを察して散開した。金囲もまた、その様子に何かが来ると警戒する。
「我が心刀の力の前に燃え尽きよ!」
上段からの振り下ろしと共に巨大な炎が噴き出て金囲へと襲い掛かる。
「全員! 全力で九尾の狐にかかれ! ただのガワだけを被った偽物など俺たちの敵ではないことを見せてやれ!」
全身を炎に巻かれた金囲だが、水にぬれた犬のように体を震わせて掻き消してしまう。もちろん、無事では済んでおらず、一部の毛が黒ずんでいた。
「ふん、ならばお前とは火力対決といこうじゃないか」
口からオレンジ色の火を漏れ出させながら、金囲は國明を睥睨する。
対して國明は臆することなく、刀を中段へと構えて笑った。九尾の狐ともなれば、神とすら崇める者もいるほどの存在。それを前にして、不敵な笑みを浮かべる國明に金囲は僅かに目を細めた。
「何がおかしい」
「いや、お前のそのおめでたい頭は一体どうなっているのかと思ってな。化生に堕ちた輩の口から一騎討などという高尚な言葉が出てくるとは思わなかったぞ」
僅かに動きを止めた金囲は、それ以上何も発することなく、瞬時に炎を吐いた。崩れた塀の瓦礫の先にいた國明に炎が殺到するが、國明は避ける素振りすら見せない。
小さく息を吐いたかと思うと、そのまま両腕を前へと突き出した。
「――――やはり雀蜂のようには上手く勢いが乗らん。俺にはこちらの方が性に合っていそうだな」
目の前まで迫っていた炎を國明の心刀から放出された炎が二つに割った。
しかし、その光景に國明は不満があるようで、片手で刀をクルリと回しながらビリヤードでも打つように引き絞る。
「あぁ、それと、お前の言う火力比べ。俺は付き合ってやってもいいが、他の奴がそれに付き合うと思うなよ?」
「何――――!?」
次の瞬間、金囲の体が急に傾いた。
視線を下に向けると、いつのまにか自分の足元の地面が割れている。地割れの先には刀を振り切った男の姿。
「くっ、邪魔をしやがって……! この雑兵があ゛ぁ゛!?」
「おい、大将首が戦ってやるって言ってるんだ。よそ見なんかしてる暇あるのか?」
右に引き絞った刀を突き出し、左に引き絞り、また突き出す。炎の槍、或いは炎の矢とも表現すべき攻撃が金囲の顔に次々に命中する。
金囲は顔を横に振って炎を振り払い、隣の家の屋根へと飛び乗った。
「はっ、ここなら地面が割れてもいけるな」
「させるかっ!」
屋根の上にいた者たちが、ここぞとばかりに四肢へと刀を振るう。毛が舞い、鮮血が滲むが、すぐにそのおかしさに彼らは気付いた。
「傷口が、すぐに塞がるぞ」
「そりゃそうだ。この九つの尾は何でできているか知っているだろう? 魔力や気と呼ばれるものの塊でできた半実体、半霊体。それを少し体に流してやれば、お前らの攻撃なんてかすり傷にもならん」
そう言って、体を捻ると尾の一振りで屋根から人を半分吹き飛ばす。身体強化である程度は防御で来ているが、それでも負ったダメージは大きい。地面や乾いた田んぼに叩きつけられた人たちは、すぐに他の仲間に肩を担がれて運ばれていく。
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