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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第21巻 疑惑の白面狐

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狐狩りⅠ

 尾兎無はニヤリと笑うと、広之と真行の二人の腹に突き刺さった刀を捩じった後に引き抜いた。唖然とする勇輝たちの前で尾兎無は踵を返し、走り出す。

 僧正が尾兎無を追おうとするが、その前に炎の壁が立ちはだかった。


「おい、無事に返してやっただろう。追うのはよせよ。あぁ、無事だったのは返した瞬間までだったか」

「どこまでも邪魔な奴だ。ここまで来たら、正体を隠す必要もあるまい」


 僧正から周囲に向かって風が吹き荒ぶ。しかし、そんな僧正の前に広之が手を出して制する。


「お待ちを。あくまであれの相手は私がします」

「ば、馬鹿な。刀で貫かれて何故生きていられる!?」


 巳式の背後から余裕綽々で見守っていた阿上が、驚愕の声を上げる。目は限界まで見開き、何が起こったか理解できていないようだった。


「私の姿、能力の一部を模倣することはできたようですが、どのような場面で術を使えばより効果的になるか。そう言った知識、経験までは真似をできないということですね」


 何事もなかったかのように立つ広之。その腹には一切の傷はついておらず、また真行も無傷であった。この村における変化の術を見破る最大の敵。それが二人に増えただけでも面倒なのに、せっかく倒した片割れが生きているというのは、阿上にとっては相当な衝撃だっただろう。

 その目には闘争ではなく、逃走の意志が宿り始めていた。

 この場で広之と勇輝を仕留めるのは不可能と判断したのだろう。人数は彼自身を含めて三人と減ってしまうが、日ノ本国に逃げ延びた仲間は、まだ各地に散っている。それらをまとめあげれば、再起は可能であることも、阿上が逃げの一手に出ようという後押しをしていた。

 阿上の足が一歩後ろへと下がる。そんな阿上へ広之はその場に留まったまま言葉を紡いだ。


「それに私の術こそ使っていますが、随分と雑な物で巳式を呼び出していますね。式札ですらない落ち葉か何かを依り代にすれば、出力が落ちるのも当然です。全力の巳式が力を奮えば、この程度では済まないでしょうから」

「言ってやるな。そのおかげで正体を隠していた我でも、なんとか周囲を延焼させずに相手できたのだからな」


 僧正がやれやれと言った様子で、自らを団扇で扇ぐ。


「いや、何故生きている。今ので生きて居られるはずがない!」

「この村に入り込もうとしていたあなたなら知っているはずですよ。何せ、これも私が作った物ですから」


 そう言うと、破けた札を懐から出して、阿上へと見せる。その正体に気付いたようで阿上は愕然とした表情になった。


「身代わりの、札だと!?」

「えぇ、これを追加で作るのに苦労しました。おまけに使用できる日と場所の範囲も変更しなければいけませんでしたし、当分、このお札は作りたくないですね」


 元々、懐に忍ばせておいた一枚と、真行を抱きとめた時に使用した一枚。たった二枚の身代わり札だが、仕様変更で想定以上の気を使い、巳式を除く式神の維持も危うい時があったくらいだ。それを見越して、白銀の風を受け入れていたということもあったのだが、結果的に彼らが活躍することにはならなかった。


「あなたたちの能力は姿や技術を模倣する。そうなれば、元となった人物。特にこの村では入れ替わりを見抜かれてしまう者は邪魔以外の何者でもありません。そうなれば、確実に私を狙ってくるとわかっていましたから」

「お、俺がお前に化けたなんて――――」

「えぇ、最初は気付きませんでしたよ。巳式がやられた時は、どこかの国の高位の術士が現れたのかと警戒しました。でも、すぐに気付きました。何せ、あなたの仲間が彼に化けていたのですから。死んでも術が解けない、なんてなれば、私でなくても警戒します。『他にも同じ能力者がいたらマズイってね』」


 淡々と告げた後、微笑を一切に変えずに広之は真行を僧正に任せて一歩前に進み出た。


「さて、どうしますか? 巳式を囮に逃げ出します? それとも、ここで戦って勇ましく散りますか?」

「じょ、冗談じゃない。おい、お前の望み通り、ここら一帯を焦土に変えてやれ!」


 阿上が吠えると、巳式が待ってましたとばかりに鉄扇を広げて構えた。

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