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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第15巻 焔薙ぐ銀光

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言之葉家Ⅷ

 一瞬だけ、広之の表情が勇輝には読み取れなくなった。笑顔を浮かべたままだというのに、まるでそれが仮面のように見える。


「それは直接話そうと思います。安心しなさい。家族の誰かが倒れたとか、そういう類の話ではないですから」

『せめて、どういう話か教えてくれてもいいでしょう?』

「自分でも気づいているんじゃないのですか? 姫立ちの儀についてですよ」

『――――!』


 そう言った後に、広之は右手の人差し指と中指を立てた刀印をチビ桜へと向ける。すると、驚愕の表情を浮かべていたチビ桜が白い煙となって消え、元のお札へと戻ってしまった。


「え、何を――――!?」

「少し君のことを自分の目で確かめておきたくてね。あの子の目の届くところだと後で何を言われるかわからないから、式神の術式を強制的に解除させてもらった――――巳式(みしき)!」


 静かに、しかし、力強い言葉と共に勇輝の横に一つ気配が現れた。


「はっ、主殿。お呼びでしょうか?」

「桜の友人だ。大陸からここまでついて来てくれたようだ。少し手荒ではあるが、君の得意な方法でもてなしてやってくれ」

「わかりました」


 隣に立った巳式がじろりと勇輝を睨む。

 白い鱗が太陽に照らされて橙に煌めく。まんまるな目の中央で切れ長の瞳が更に細くなったのが勇輝にも見えた。

 巳とは十二支における蛇のこと。勇輝は文字通り蛇に睨まれた蛙になった気分になり、荷物が消えて自由になった手が刀へと伸びそうだった。


「ほう、私に睨まれても動けるか」

「あなたよりよっぽど大きくて怖い蛇に会ったことがあるんでね」

「ふふふ、面白いことを言う(わらべ)だ。今からどうやって叩きのめしてやろうか」


 勇輝は即座に後ろへ飛び退り、距離を取る。

 門の外で会った馬や牛。午式や丑式とは違い、巳式は鎧などは着こんでいなかった。武器もなく、持っているのは右手に握った鉄扇のみ。首から上は恐ろしいが、逆に言えば、そこから下にはあまり脅威を感じない。

 だが、それでも勇輝はこの距離を危険と判断した。それは理屈でも魔眼でもなく、単純に自分の中の本能が勝手にそうさせた。


「おいおい、陰陽師さん。流石にそれはどうなんだ!? 自分の娘をここまで送り届けた奴に攻撃をするなんて――――」

「やめておけ。俺たちが言ったところで、止まるようには見えない。それと、下手に動くなよ。他の式神もどこかから見ているようだからな」


 思わず正司が声を挙げるが、それは隆三によって遮られる

 しかし、その声が向けられた張本人である広之は、涼しげな顔で聞き流す。もはや、勇輝のこと以外、眼中にないと言った感じだ。


「ちょっと、これは一体どういうことですか?」

「今、言った通りです。君の実力が見たい。知っておきたい。私自身の目で」

「そんなことを言われても……」


 勇輝が躊躇うのも無理はない。

 いくら実力が見たいからとはいえ、見た目だけで言うならば鉄扇しか持っていない相手に斬りかかるわけにはいかない。だが、自分が思わず飛び退いてしまう相手に手を抜けるかと言えば不可能。

 では、ガンドで戦うかとなると、家の周りの結界を破壊してしまうことになりかねない。全力を出すわけにはいかないとなると、どう戦えばいいかが勇輝には思いつかなかった。


「あぁ、手加減なんてしなくても大丈夫。仮に、君が彼を倒したとしても紙切れに戻るだけだ。周りにある結界も気にしなくていい。塀や壁が壊れてもすぐに直せる。それに――――」


 広之の目が巳式と同じようにスッと細められた。

 その表情を見て、勇輝の背中を悪寒が駆け上る。目の前にいる広之が冗談などではなく、本気でこちらに式神を(けしか)けようとしているのだと気付いた。


「はっ、私相手に手を抜く? そんなことしたら、死ぬよりも辛い目に合わせてやろう」


 パチリ、と鉄扇を軽く開閉する音で勇輝の意識が巳式へと向く。そんな勇輝に広之は短く警告した。


「――――彼は私の式神の中でも最も凶暴だ」

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