言之葉家Ⅶ
「頼んだよ、ジュツシキ」
広之の言葉に頷いて、勇輝から荷物を受け取ったジュツシキ。ここに来て更に増える存在に、勇輝は勿論。隆三ですらも驚愕を隠せずにいた。
その表情を見て、広之が申し訳なさそうに再び扇子を口元に上げる。
「これは失礼。驚かせてしまいましたね。彼ら彼女らは一応、私の操る式神でして……全部で十二体いるんです」
「マジか……十二天将全員いるのか……」
彼らの名前に聞き覚えがないが、まさに安倍晴明が操っていた式神は全部で十二体いた。それを考えると、目の前にいる男はとてつもない陰陽師なのではないかと冷や汗が噴き出て来る。
「名前の由来は十二支に式神の式と書いて、子式・丑式・寅式・卯式……となっていましてね。私がいない時には『誰か』と声を挙げれば、いずれかの式神が出て来てくれるでしょう」
「恐ろしいな……こんな奴らが十二人か」
隆三は拳を強く握り込んだ。大陸ではかなり名を挙げた彼だが、国内にはまだまだ自分よりも格上が存在することに、悔しさ半分、嬉しさ半分と言った心境だろう。
後ろの正司や巴に至っては、とんでもない魔境に足を踏み入れてしまったと表情が完全に固まっている。
「それで、どこまで話をしましたか……あぁ、この後はどうしていかれるかでしたね」
「我々は休息した後、南条の領地に向かおうと思います。お気遣いは結構です。その代わり、彼のことをお願いしてもよろしいですか? ファンメル王国からずっと一緒に来ているのですが、移動する馬車は一台しかないので」
「ご安心ください。彼のことは色々と聞いておりますから」
おや、と勇輝は不思議に思った。
広之と会うのは、これが初めてのはずだ。そして、彼の知り合いだという人物に出会った記憶もない。では、どこから自分のことを聞いたのか。キョトンとした顔をしていると、広之が小さく笑いながら一言告げた。
「私と同じような術者で、君のことをよく知っている人物。心当たりがあるんじゃないですか?」
「まさか、ひいばあちゃん……!?」
巫女と陰陽師。明らかに違う職業だが、何かしらの力を扱う魔法使いというカテゴリーでは同じだろう。しかし、直接の知り合いだとは思ってみなかった。勇輝が一体何を言われたのかと、再び緊張に襲われている視界の端で、桜が手を振りながら奥の方へと消えて行った。
「まぁ、一番の情報提供者は私の身内なのですが――――」
「へ? 何を――――」
広之が発した言葉の意味を理解するよりも前に、チビ桜の声が届く。
『ゆ、勇輝さん。それよりも、今日の宿はどうするつもりですか? まだ昼ですけど、ここは宿場町ではないので泊まるところはありませんが』
「え、それは困るな。そこまで考えてなかった」
てっきり、どこかに宿の一つや二つはあるだろうと思っていた勇輝は衝撃を受ける。
しかし、そんな勇輝を気にせず、広之は勇輝のコートのポケットから顔を出したチビ桜に顔を寄せた。反物と同じくらい興味深げに観察した広之が、嬉しそうに頷く。
「ファンメル王国では、習った術の復習をしっかりしているか不安でしたが、随分と式神の扱いが上手くなったみたいですね。――――後で、他の術式もどれくらい上達したか見るのが楽しみだ」
『お、お父さん、そういうのは明日でもいいでしょう? それよりも、何でわざわざ私をここに呼び戻したのか説明してください』
桜の実家に訪れた目的。それは桜自身もわかっていないままだった。ファンメル王国の王都オアシスの結界をすり抜けて届けられた式紙を用いた手紙。そこに書いてあった父からの呼び出しを受けて、ここまで戻ってきたのだ。
久しぶりに会えた嬉しさで一瞬忘れてしまっていたが、その目的を早く知りたいというのは誰であっても同じように考えるだろう。
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