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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第15巻 焔薙ぐ銀光

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言之葉家Ⅴ

 桜は島の方を一瞥した後、周囲を見渡しながら前へと進む。


「多分、誰かが来てくれると思うから、その人に渡してもいいんだけど……」


 勇輝の持っている荷物の中から、左手で抱えている反物を指差して桜は答える。


「これはお父さんに直接見せてから渡した方が良いかも、多分、その方がお父さんも喜ぶと思う」

「そうだよな。俺でもかなりの珍しい物だっていうのがわかるくらいだ。見る人が見たら、下手すると腰抜かすんじゃないか?」


 御伽噺にある火鼠の皮衣はかぐや姫に出て来るアイテム。そして、それを作ったのは鶴の恩返しに出て来る鶴と同じ名前の製作者「おつう」。これだけのビッグネームが揃っていれば、珍しいで済む話ではないだろう。

 これだけの豪邸に住んでいるのだから、多少の珍しい物には縁があることは予想される。それでも、これを出したらどのような反応があるか。勇輝はほんの少し期待に胸を膨らませてしまう。


「火鼠の皮衣ね……。そんな便利な物があるんだったら、少なくとも、焼け死ぬ心配はないってことだ。喉から手が出るほど欲しいって奴は山ほどいそうだな」

「でも本物なんでしょうか? 私たちも見たときは圧倒されて、何も言えませんでしたが、本当に火にくべたわけでもないでしょうし」


 正司はどちらかというと本物ならばロマンがあると考え、巴は若干懐疑的な眼差しで勇輝の抱えるそれを見る。そんな二人の部下の言葉を、隆三は一言で吹き飛ばす。


「真贋なんて、陰陽師ならすぐにわかるだろ。あれだけの式神を使役しているんだ。弱いはずがない。そして、強い奴はそれだけ優れた知識も有しているもんだ。わからないって言うのなら、それは『能ある鷹は爪を隠す』って奴だな」


 西の対と呼ばれる建物を通り過ぎ、遂に主が住む建物である寝殿の目の前まで辿り着く。一歩踏み出すごとに玉砂利が音を立て、それが妙に耳に響いていたが、ここまで来ると緊張で何の音も耳に入ってこなかった。


「これはこれは、みなさん。長旅ご苦労様でした」


 階の近くでは既に、映画や漫画で陰陽師がよく着ている狩衣姿の男が立っていた。近づくと柔和な微笑で話しかけてくる。

 ここに来るまでに出会った三人の男とは違い、勇輝は内心ほっとした。


「お父さん。ただ今戻りました。」

「こらこら、人前ではお父様と及びなさい。はしたないですよ」

「ごめんなさい。お父様」


 勢いよく走って行った桜だったが、すぐに窘められてトーンダウンする。

 しかし、そんな彼女の頭を優しく撫でて、男は道を開けた。


「疲れているでしょう。まずは荷物を東の対に置いてきなさい」

「わかりました。誰か手伝ってくれる人は――――」

「――――ここに」

 桜が辺りを見回すとその真横に跪いた状態で急に人が現れた。その頭部はやはり人ではなく、ネズミだった。

 その姿を認めた瞬間、桜は勢いよくその小さな体に抱き着いた。


「ちーさん! 久しぶりだね。会いたかった」

「あーもう、お客様の前だからかっこよく出ようと思ってたのに、我慢できないじゃない。桜ちゃん、元気にしてた? 見ない内にまた一段と可愛くなっちゃって! 後でいっぱい話を――――」


 そこまで言って、ちーさんと呼ばれた者の動きが止まる。顔を左右上下に動かし、しきりに桜の匂いを確認しているように見えた。


「あれ? もしかして私臭かった?」

「いえ、そうではなく。どこか同族の匂いがしたものですから……」


 桜から離れてちーさんは更に空を鼻を向けて匂いを確認している。主である桜の父はそれをスルーし、勇輝たちの方へと再度向き直った。


「改めまして、桜の父の言之葉広之と言います。この度は娘の護衛を引き受けてくださり、誠にありがとうございます」

「い、いえ、仲間として当然のことをしただけですから、お気になさらないでください」


 緊張しながらも勇輝が返事をすると、広之は満足そうに頷いて、その後ろにいる隆三たちに目を向けた。

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