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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第15巻 焔薙ぐ銀光

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言之葉家Ⅰ

 村はそれぞれの民家の間隔が開いており、様々な個所に点在している。

 しかし、勇輝たちが向かった場所はさらに孤立した場所にあり、村の北と東にある山に挟まれた長い道を進んで行かなければならなかった。距離もそこそこ離れていることもあってか、人が通りかかる様子も見られない。

 鬱蒼と生い茂る植物たちの間を潜り抜け、やっとのことで辿り着いたその家こそ、桜の実家であった。


「……でかいな」

「そんなことないよ。他の人の家に比べたら脆いし、小さいもの」


 今まで見てきた中で最も古風な家だと感じた。城壁とは比べる間もなく、ただの塀と呼んで差し支えない外観から始まり、開いた門の向こう側に見える家の屋根は瓦ではなく檜皮葺(ひわだぶき)。つまり、檜の樹皮を剥いで加工したものだ。

 防御能力については一段どころか二段、三段も劣るように見えるが、勇輝は既にそれが見た目だけだということに気付いていた。

 魔眼で見れば、至る所に張り巡らされた魔術、いや、陰陽術とでも言うのだろうか。その内容を読み取ることはできないが、色とりどりの輝きを見るに、様々な術が展開されているのだろう。恐らくは、魔法や呪いの類を無効化するだけではなく、何かしらの攻撃性を持ったものも紛れ込んでいることが推測できる。

 いかにも食べたら毒があるとキノコが派手な色を持つように、勇輝の魔眼にも綺麗な光だけでなく、禍々しい妖光が幾つも浮かんでいた。それは塀に留まらず、その上の空間までもがオーロラのように絶えず変化している。

 勇輝は、ずっと見続けていると頭が痛くなりそうなので、眼を閉じて目頭を押さえた。


「いや、その……かなり趣があるというか、古風と言うか……良いお屋敷だね」


 勇輝は何とか平常心を保ちながら、表情が固まらないように意識して声をかけた。

 引き攣りそうになったのは何も魔眼に映った光だけが理由ではない。上から見下ろしたわけではないので確証を持って言えることではないが、雰囲気的に屋敷は教科書で見るような寝殿造りだと勇輝は感じていた。

 わざわざかなり昔の雰囲気を彷彿とさせるような光景に、陰陽師は安倍晴明に近い時代へと合わせる何かがあるのかと勘繰ってしまう。ただ、こういった建物に当時住んでいたのは貴族などの上流階級であったため、安倍晴明がこういう所に住んでいたかと言われると、その可能性は低い。逆に言えば、これだけの広い土地でこのような屋敷を所有出来ているのだから、没落貴族のようなものだと言っていた桜の言葉はあまり信用はできない可能性が出て来た。


「隆三さんたちはどうします?」

「俺たちか? とりあえず挨拶だけして、南条の本家に向かう。これくらいの時間なら次の宿場町には行けるはずだ」


 陽はまだ中天に届かず温かい光を降らせている。日が暮れるまでには、まだ六時間以上はあるだろうから、余裕があるのは確かだ。


「そうですね。これくらいだと……一刻半くらいは余裕がありそうです」


 御者の俊二からも肯定の声が飛んでくる。今回の旅路でかなりの長期間の拘束になっているが、その分だけ報酬は弾まれることが約束されているので、彼の表情は明るい。

 勇輝と桜は俊二に差し出された契約書に署名を行い、旅程が確かに終了したことを確認した。これで彼がギルドに行けば、二人の口座から報酬が引き落とされることになるだろう。


「お疲れさまでした。色々と危険な目に合わせてしまいって、すいません」

「いえいえ、北御門様たちもおられたので大丈夫だと思っておりました。流石に大鬼の事件には冷や汗が出ましたが、こうして五体満足で生きて辿り着けたので問題ありません」


 俊二は朗らかに笑いながら馬を撫でる。

 鼻息荒く、馬が首を振るのも気にせずに続けて、俊二は隆三たちへと視線を移した。


「私はここでお待ちしております。出発する際にはお声掛けください」

「わかった。それじゃあ、嬢ちゃん。案内を頼む」

「はい。任せてください」


 そう言って桜は目の前の門へと歩き出した。

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