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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第15巻 焔薙ぐ銀光

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雛森村Ⅴ

 張継は受け取ると、その場で中を確認する。


「木箱を見て、もしやと思ったが……あそこの羊羹か。暇があれば時々買いに行くくらいには好きなんだが……よく好みを知っておったな」

「い、いえ、その知っていたわけではなく……」


 勇輝は先ほどの緊張がまだ抜けないのか。早口になりながらも否定する。

 単純に羊羹を選んだのは、自分の家では「末永くお付き合いする為」と習ったからだ。尤も場合によっては長いものは切らないと食べられないので、「縁を切る」と捉えられてしまうこともあるので、注意が必要である。


「ふむ、まぁ、ここの村にいる奴らは皆、武士だ。切れやすいというのは好まれるからな。良い選定だ」


 そう言って羊羹の入った包みを嬉しそうに仕舞う張継。その笑顔からたいそう気に入ってくれたようで、勇輝はやっとここで、ほっと一息つくことができた。


「米田も赤桐もそれなら喜ぶだろう。この後は、そちらにも足を運ぶのかい?」


 米田と赤桐。それはこの村の二大勢力のそれぞれの代表者だ。

 東雲側が米田。そのまとめ役の当主を米田潤平といい、この村での田畑や周囲の管理を任されている。対して、南条側が赤桐で、当主を赤桐蜻蛉(かげろう)。主に魔物退治などの編成や計画、集団戦術についてを任されている。

 個人の技術はそれぞれの家で、集団で管理すべきものは役割を分けて解決する。そして、共同ですべきことは協力する。派閥はあるものの、最終的に行きつく先は日ノ本国の安寧である為、桜が言うには大きないがみ合いや争いなどは見ていないという。


「はい。できるだけ早く挨拶に伺おうかと」

「そうか。それじゃあ、先を急ぐと良い。少なくとも、儂の所ではお主がいることは把握しておこう。困ったら、いつでも尋ねて来なさい。()()()()、な」


 少し含みがある言い方に勇輝は疑問を覚えたが、あと二人も殺気を飛ばしてくるかもしれない人を相手にしなければならないという恐怖の方が大きかった。


「そうだ、桜ちゃん。家に戻ったらお父さんによろしく言っておいてくれ。今年も頼むと言えばわかると思うから」

「はぁ……わかりました」


 首を傾げる桜を尻目に張継は、よほど羊羹が楽しみなのか。少しばかり戻って行く足取りが軽いように見えた。

 そんな背中を見送りながら、隆三はぼそりと勇輝に呟いた。


「勇輝、あの爺さんを見てどう思った?」

「どうも何も。あの年ですごい覇気を纏っていたな、としか。思わず羊羹を落として、刀を抜こうかと思いましたから」

「あの爺さんはな。元水皇・水姫剣術指南役の一人だ。俺も実際に見たわけじゃないが、四方位貴族がそれぞれ使う流派を全部習得しているらしい」


 一つの流派を覚えるだけでも大変なのに、それを四つも。それを知って、勇輝は刀を抜かなくて正解だと安心した。もし抜いていたら、刀でなくても何かしらの致命的な一撃を食らわされていたかもしれないと思うと震えが止まらない。

 ファンメル王国にも張継と同じように老齢の騎士に稽古をつけてもらったことがあるが、同じような気配だと気付くには遅かった。

 自分の首を軽く手でなぞって、大きく深呼吸をすると勇輝はやっと安心して馬車へと歩み出すことができた。最後にもう一度だけ張継の姿を見ようと振り返ると、そこには縁側でいつの間にか羊羹を食べ始めている彼がいた。


「……そこまで早く準備して食べてもらえるのは嬉しいけど、早すぎでは?」


 幼子のような笑みを浮かべて羊羹を口に頬張る姿を頭の片隅に留め、先程の殺気を思い出す。本当に、あの殺気を出した人物と同一人物なのかと疑ってしまいたくなる。しかし、どう考えても入れ替わる隙など無かったし、何よりそれをする意味などがない。

 勇輝は残り二人が、もう少しだけでも優しい人物であることを祈り、馬車へと乗り込んだ。

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