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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第15巻 焔薙ぐ銀光

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雛森村Ⅲ

 雛森村に着いた勇輝は、その姿に圧倒されていた。通り過ぎる家、見える家、それら全てが一つの小さな城のように見えるからだ。


「えっと、もしかして、ここって村全体が城になってたりします?」

「初めて来た奴は確かに、この光景に腰を抜かすこともあるかもしれないな」


 城にあるような堀、生垣に白い漆喰の壁。奥にあるのは流石に平屋の木造家屋だが、中には本当に城のような建物がある所も見受けられる。

 よくある木造の家が並んでいる風景を予想していた勇輝は、少しばかりどころか大いに面食らってしまった。唖然としたまま外を見ていると、小さな子供がものすごい勢いで馬車の横を通り過ぎていく。


「まーてー!」

「やーだよーだ!」


 微笑ましいはずの光景なのに、勇輝は口が開いたままそれを追いかけることしかできない。そんな姿を桜は口元を押さえて笑うのを堪えていた。


「た、確かに、今まで通って来た宿場町とは違うけど……そこまで驚くなんて……」

「俺、一瞬、軍事施設か何かに迷い込んだのかと思った」


 勇輝の指摘はあながち間違いではない。なにせ、ここは言うならば武士の養成場のようなものだからだ。幼い頃から武術や戦術など体も知能も戦うこと専門で学び続けることが要求される。

 正司曰く、「かくれんぼも鬼ごっこも全ては己が大人になった時に必要となる力だ」という。


「(かくれんぼは身体能力に加え、隠れる場所の判断や息の殺し方。鬼ごっこは脚を中心とした瞬発力や持久力。そして、瞬時の判断力が鍛えられるってことか)」


 それを考え得ると、先程通り過ぎていった子供たちも遊びの最中に鍛え上げられているのだろう。勇輝の何世代か上の人たちは、子供の頃によく野山を駆けずり回ったなどと話をしていたことがあるが、みな足腰は年老いても壮健だったのは確かだ。


「さて、とりあえず、どこに向かえばよろしいでしょうか?」


 御者台から声が響くと桜が返事をして、前に駆けていく。指をさして、どうやら進む道を説明しているようだ。


「とりあえず、ここの子供たちは朝起きたら大人と一緒に田畑を整え、勉学に励み、体を動かして寝るという生活を何年も続けるわけだ。そりゃ、体も丈夫になる」

「農業もやるんですか?」


 武士と農民は違うものであると考えていた勇輝。驚愕の声を挙げて問うと、隆三は苦笑いする。


「武士は戦い、農民は耕すなんて時代はもう昔の話だ。魔物がいる以上、食料の確保はいつでも大切だからな。それにこうやって食べる物を育てる大変さを知っておけば、好き嫌いする奴も減るってわけだ。戦場に出れば、そんな悠長なことも言ってられないしな」

「戦って生きるために必要なことは何でも教える、ってことですか?」

「簡潔に言ってしまえば、そうだな」


 国を挙げての完全な軍人養成。その点はファンメル王国の魔法学園とは似て非なるものだ。魔法学園にはまだ貴族以外の生徒も入ることができる。

 しかし、ここは完全なサラブレッドの養成所だ。一般人が入り込もうと思っても弾き出されるのが目に見えている。

 果たして自分がここに足を踏み入れてしまってよかったのかと、僅かな不安が過ぎった。思わず、その不安を吐露すると、正司が一瞬呆けた後に笑い出す。


「ははは、何を言い出すかと思えば、そんなこと気にしてどうするんだ」

「いや、こんなところに留まる人なんていないでしょ?」


 旅行だとしても、この村に長くいるのは余程のことがないとあり得ない。むしろ長居すれば間諜か何かと言われる可能性があると、勇輝は考えていた。


「あー、確かにそれはあるかもしれないけど、今から村長と代表者の所に挨拶に行くんだろ? おまけに土産も持って行くんだ。悪いようにはしないだろ。それに何かしたとしたら、それはそれで問題になるからな。お前さんは嫌がるかもしれないが、巫女長の血縁者に手を出す愚か者はいないだろうよ」


 そう言われて、勇輝は確かに、と納得してしまった。この世界に迷い込んでしまう前の世界で、死んでしまった曾祖母は、何故かこの世界で巫女長として新たな生を送っていた。

 巫女長は国を守る要の一つで、重宝されているのは首都を訪れた時に一目見てすぐにわかった。その家族に手を出せば、どうなるかわからないのは子供くらいだろう。

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