雷天大壮Ⅶ
雷天大壮。天の上にて雷が鳴り響き、勢いが盛んであることを象徴している。
天は味方し、地の利があり、自らの実力もそれに見合うだけのものがある。後はそれに従い、あるべき力をあるべき方向へと自分の魔力で導くだけだ。
即ち、天上にある雷は地に落ちるが必然。青天に現れる何十もの雷を大龍は勇輝たちへと誘導する。
「(あの魔弓使いは面倒だが、あそこからは動けない。矢を番えない所を見ると優先度は低い。狙うべきは近付いてきている男二人。いや、あの勇輝と呼ばれていた奴の方が面倒か)」
不可視の遠距離攻撃。遠当てとも違う明らかに常軌を逸した威力。放置しておけば大軍を屠ることも容易い戦力になりかねない。いずれ祖国と刃を交えることになる相手。それならば、今の内に消しておくに越したことはない。
自らの魔力を服のように捉え、そこに腕を通すかのように一気に雷が迸る。こうなってしまえば、大龍ですら止めることはできない。
「……死んだな」
目の前で閃光が弾けるのを見て大龍は笑みを浮かべた。
本来は青龍を介して、広範囲に千を越える雷を放つ極大殲滅術式。しかし、己自身の力だけでも、その一割まで疑似的に再現することができる。
勇輝たちに放ったのは、その更に数分の一の規模だが、それでも威力は折り紙付きだ。避けることはできず、防ぐにしてもかなりの魔力を要する。放たれれば用意のない者は地に倒れ伏すしかない。
衝撃で舞い上がった土埃を剣の一振りで風を巻き起こして吹き飛ばしつつ、もう一度剣を構えた。
「さて、後はあの魔弓使いだが――――っ!?」
視界の端に映った飛来物に即座に反応して、剣を振るいながら体を逸らす。黒い棒状のものが立て続けに五本、大龍の正中線があった所を通り過ぎていく。
思わず術式を練ることを忘れ、次の攻撃に備えた大龍だったが、即座にそれが間違いであったことに気付く。飛来物とは反対側から聞こえる土を踏みしめて近付いてくる足音。それに反応して剣を思いきり横に薙いだ。
「ちっ、危ないなこの野郎!?」
不可視の斬撃をスライディングで潜り抜けるかのように滑り込んで来た勇輝。走ってきた勢いを殺さず、そのまま立ち上がると大龍に向けて人差し指を向けた。
「喰らえっ!」
「同じ手が何度も通じると思うな!」
最後の一発としてとっておいたガンドだったが、返す刀で振るわれた剣に一刀両断にされる。剣自体にも緑の光が纏われているところを見るに、簡単には破壊できそうにないと勇輝は判断して、即座に前へと出る。
「はっ、遅い!」
勇輝は納刀したまま右手を中途半端に前へ出している状態だ。まだ指が大龍に向いていたのならば、彼も警戒をしたのだろうが、明後日の方向にあれば恐れるものは何もない。さっさと剣で斬り飛ばし、後ろに迫っているもう一人を始末するだけだ。
手首をクルリと翻し、片手でそのまま勇輝の頭部目掛けて振り下ろす。大龍が背後にいるであろう正司の気配を読んで次の攻撃を考え始める。
「――――?」
しかし、いつまで経っても訪れない右手の感触に大龍は訝しんだ。そして、気付く。自らがほんの数瞬、意識を逸らした瞬間に勇輝の姿が消えていることに。
「遅いのは、お前の理解の方だったな。敵を侮るから、そんなことになるんだ」
「ちっ、躱したくらいでいい気になっているんじゃ――――」
そこまで言って大龍は右手に力が入らないことに気付く。それだけではない。やけに自分の腕が熱い。
――――ヒュオン
勇輝が刀を振って、大龍へと構える。
大龍の目が間違っていなければ、刀を振った瞬間に何か液体が地面へと飛んだように見えていた。
「――――な、な!?」
嫌な想像を理性で掻き消そうとしながら、己の二の腕を見た大龍は驚愕に目を見開いた。いつの間にか、腕の内側がぱっくりと斬られ、夥しい血が溢れ出ていた。
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