雷天大壮Ⅵ
「真上からの雷が防げれば、勇輝さんたちが前に出れるんだよね? 上手くいくかわからないけど、それなら少し手伝えるかも……」
桜は杖を軽く握りしめる。その手は微かに震えていた。
失敗すれば死。それも自分以外の人の命が犠牲になるかもしれないという、重責が彼女に圧し掛かっていれば、当然のことだろう。
ただ、今までの大龍の言動を読み取るのならば、桜はそれを防げる可能性が高いと告げた。
「よし、それで行こう」
「え……良いのそれで?」
「良いも悪いも、桜が考えた末に言ってくれたんだ。それでダメだったとしても、最初から接近戦に持ち込むしかないんだ。少しでも手があるならやった方が良いさ」
大龍が持っている護符の数は不明。ガンドで遠距離戦を挑んでも撃ち負ける可能性がある。それならばガンドで牽制しつつ、防げない物理攻撃で対抗するしかない。そこに僅かでも雷から身を守る方法があるというのならば、例えほとんど効果がないとしても気が楽になる。
「俺はどうすればいい?」
「隆三さんは念の為、上からの一撃を警戒してください。私の魔法が上手く雷を防げたら、本物の矢で撃てば……」
そこまで言って桜は口籠る。魔弓で実物の矢を放てば手加減が効くのかわからない。当たり所が悪ければ即死。どうするべきなのか迷う桜だが、勇輝がぼそっと呟く。
「隆三さん。あいつを殺すと青龍の方が黙っていないでしょう。だから、あくまでここは俺と正司さんで何とかしないといけません」
「そうだな。勇輝の言う通りだ。隆三様なら死なない部位に当てることも可能かと思われますが、万が一があれば、あの神様と戦わないといけなくなる上に、蓮華帝国が色々言ってきて面倒なことになるでしょう。ここは桜の嬢ちゃんを信じて前に走るだけですって」
勇輝と正司が捲し立てると、隆三は下唇を噛んだ。
「そうか……そうだな。すまん。お前たちに危険な役目を押し付ける」
一瞬だけ隆三の顔に影が宿る。しかし、それも束の間、すぐに表情を元に戻して隆三は桜へ確認する。
「準備にどれくらいかかる?」
「十秒もいりません。ただ、防げたとしてもそう多くはないと思うので、できるだけ短時間で決着をお願いします」
「そうか。わかった。巴! お前はやることはわかってるな?」
巴がこくりと頷くと、隆三は勇輝の肩に手を置く。
「行って来い。最悪、ぶち殺しちまっても、貴族や国のしがらみは俺が全部何とかして庇ってやる。この瞬間を切り抜けることだけを考えろ」
「わかりました」
勇輝は頷くと大龍の方へと向き直った。
律義に待っていたのか、それとも道術の完成がまだだったのか。大龍は勇輝の魔眼が痛みを覚えるほどの光を放ったまま微動だにしていなかった。
「相談は終わったか? 俺に殺されるのは誰からだ? それとも、無様に額を地に着けて命乞いでもするか?」
「冗談はよせよ。どうせそんなことしても見逃すつもりなんてないだろうが」
「ははは、よくわかっているじゃないか。それじゃあ、もう話すことはないな。さっさと死んじまえ!」
大龍のその言葉を合図に勇輝と正司が一気に前へ飛び出した。数メートルを加速しながら、勇輝がガンドを五発放つ。
その親指と人差し指を立てて指をさすという動作に、大龍は嫌な予感を覚えたのだろう。剣を垂直に構えたまま、僅かに身を強張らせた。
次の瞬間、大龍の目の前でガンドが見えない何かにぶつかって大幅に魔力が減衰する。
「(ファンメル王国にあるミスリル原石も陥没させる威力だ。ただの護符なんかで防げるはずがない……!)」
先程と同様に、完全に防げているわけではないようで、ガンドの青い光が弾けた所に近い体の部位が、所々その光に侵食される。しかし、それも一秒と経たず大龍の緑の光に飲み込まれ消えて行ってしまう。
「やはり、報告にあった通り。お前がローレンス領で我が国の部隊に大打撃を与えた奴だったか。ならば、その代価をここで払って行ってもらおうか! 『雷神 招来悪果 急々如律令――――』」
顔を引き攣らせながらも大龍は剣を一度、直上へと掲げ、そのまま勇輝たちの方へと振り下ろす。一際、大きな光が一度天に昇ったかと思うと、大龍の言葉と共に弾けた。
「『――――雷天大壮!』」
【読者の皆様へのお願い】
・この作品が少しでも面白いと思った。
・続きが気になる!
・気に入った
以上のような感想をもっていただけたら、
後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。
また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。
今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。




