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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第14巻 紅より来たる龍

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神霊Ⅶ

 雷は人間が反応できる速度を遥かに超えている。それを踏まえた上で、尚、隆三は防ぎきって見せると言ってのけた。


「巴、二人を下がらせておけ。これはあくまで俺が売った喧嘩だ。巻き込んじまったら寝覚めが悪い」

「わかりました。ご武運を……」


 巴は短く答えると左に桜、右に勇輝を抱えて、その場から一気に正司のいる後方まで走る。それを見送って隆三は改めて青龍を見た。


「悪いな。待ってもらって」

『ふん。後で言い訳にされては困るのでな。それでは行くぞ』


 予備動作はなし。発生、即直撃。隆三はその現実を前に魔弓を上に向けて、さらに強く引き絞る。


「隆三さん! 無茶しちゃいけない!」


 勇輝は巴の腕を振りほどいて叫ぶ。自分の目の前に落ちた雷は本物と違わない閃光と轟音が伴っていた。幻でもなんでもない。喧嘩を売ったのは自分だと隆三は言っていたが、元はと言えば、この戦いは勇輝と大龍のものだ。

 それで隆三が矢面に立たなければいけないこともおかしい。万が一、死んだり大怪我を負ったりしたら謝って済む問題ではない。

 慌てて隆三に駆け寄ろうとする勇輝の腕を、巴が握って引き止める。


「勇輝さん。いいですか? 隆三様はこの問題をできるだけ小さく収めようとしているだけなのです」

「これで、収まるはずがないでしょう!?」

「いえ、こちらとあちらの国の貴族が諍いを起こすのと、一般人と貴族が諍いを起こすのでは話が違います。場合によっては勇輝さん、あなただけが罪に問われる可能性すらあります。あちらの国は一般人の証言など気にはしません。ですが隆三様なら――――」


 それはつまり、今回の出来事は最終的に大龍と隆三の間で起きた揉め事として処理をするということだ。日ノ本国も蓮華帝国も高位の貴族となれば、下手に手出しはできない。


「そ、そんなこと一言も……!」

「えぇ、それを話せば、もう少し簡単に話は進んでいたでしょう。ですが、隆三様はそれを良しとしなかった。あなたが被害を受けたまま食い下がれば、どうなるかわかりませんでしたから」


 勇輝は自分のことしか考えずに行動していたことが恥ずかしく思えて来た。それと同時に、少しでも隆三が勝つことができる方法はないかと考えを巡らせる。


 ――――気付けば勇輝は魔眼を開いていた。


「(ぐうっ――――!?)」


 輝く緑の光の奔流。その中に僅かではあるが青や赤、黄色の火花が散っている。すぐに網膜が、視神経が、脳が光で塗りつぶされるのを感じた。それでも勇輝は手を翳しながらも前を見るのを止めなかった。


「(俺の魔眼なら、雷が落ちて来る前兆を捉えられるかもしれない。後は、それを隆三さんに伝えられればっ!)」


 青龍の体から放たれている光は大きく真上に伸びている。

 大龍が呪符で放った雷と同じように飛ばせば、真上に構えている隆三の腹に当てることは可能だろう。だが、青龍はまるで隆三の挑戦を受けて立つかとでもいうように魔力を上へ上へと伸ばしていく。


「隆三さん! 雷が落ちて来る時は――――」


 それ以上、勇輝は言葉を続けられなかった。

 一瞬だけ、隆三がこちらに目を向けると小さく、だが、鋭く勇輝に言葉を投げかけたからだ。


「――――男の真剣勝負だ。俺が自分で挑んだ以上、口を出すな」

『その心意気やよし。我が一撃、受けてみよ』


 言い終わるや否や。青龍の周りの空気ごと一際空間が大きく膨れ上がるような感覚に襲われる。遅れて、勇輝は隆三の直上に一瞬だけ青白い光が細く降りて来るのを見た気がした。その光の行く先は、隆三が掲げた魔弓。

 その後に起こったのは、やはり眩い閃光と耳をつんざく轟音だ。それ以上は言うまでもなく、誰もが隆三の姿を見失った。肉眼も魔眼も等しく、迸る光の前には視界を塗りつぶされてしまう。

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