あたしを舞踏会に出す気かい!?
数日後。
昔の私の机でパンを食べていると、支配人が報告へ来た。
「新しい運営方針が、大変好評でございます」
「何が?」
「『四十七夜では客の秘密を決して覗かない』との評判が広がりまして。王侯貴族、大商会、外国使節からの予約が急増しております」
「……当たり前のことしただけなんだけど」
「その当たり前が、他では難しいのでしょう」
嫌な納得をした。
支配人が王家の紋章で封じられた書状を差し出す。
「その件で、王家より正式な依頼がございます」
「王家?」
「王太子殿下の学院卒業を祝う祝賀会です。会場として四十七夜をご指定いただきました」
王太子。
その言葉で手が止まった。
十五年前。
あの子は五つだった。
私は王城へ入り、その寝室の扉まで行った。
殺すためじゃない。
止めるためだった。
でも、扉の向こうの顔は見なかった。
「で、かあちゃんも出るから」
横で書類を読んでいたルシアが言った。
「……何で」
「残り四十二人、止めて回るんだろ?」
「そうだけど」
「王都で動くなら、表の身分が一個あった方が楽だ。社交界に顔出しときゃ、貴族の家へ行くたび身元を作らなくて済む」
理屈だけは通っている。
ルシアが別の封筒を滑らせてきた。
「遠国から来た貴族令嬢。二十五歳。王国社交界は初参加」
「……名前は」
「レーヤ」
「そのまま?」
「かあちゃんの名前だろ。捨てる必要ねぇじゃん」
返す言葉が止まった。
そこへ扉が開く。
メイドたちが、何着ものドレスを抱えて入ってきた。
王家の紋章。
ドレス。
その二つを見比べる。
私は今、王城西塔を吹き飛ばした女として、生死を問わず探されている。
十五年前、扉の向こうで眠っていた子の祝いが、私の子どもたちのホテルで開かれる。
そこへ私は、自分の名前で出席するらしい。
「似合うと思うぜ、かあちゃん」
ルシアが笑った。
「……そういう問題じゃないんだよ」




