08.まさかの大きさでしたわ
マジョリーカの目の前にある、彼女の数倍はありそうな巨大な金属の円盤。とんでもない大発見だと思いきや、それは一枚のありふれた王国銀貨だった。
銀貨に彫られたイカルガニア王国の紋章に、前世の嫌な思い出がよみがえりそうになったけど、何とか無理やり頭の中から追い出した。もう二度とあんな薄汚いモノたちに自分を左右されたくないからね。
心を落ち着けてから、マジョリーカはもう一度、銀貨を見る。とんでもなく巨大な円盤だ。でも今は分かる。金属板が巨大なんじゃない。マジョリーカの方が小さすぎるのだ。
銀貨の大きさから考えると、マジョリーカの大きさは一センチ弱ぐらいしかないって計算になる。
「まさかそんなに小さかったなんて。そんなの聞いてないですわよっ!」
それにしても、たった一センチの小さな体だったとは。
マジョリーカが小さかったってことは、外で群れをなしていた巨大魚、あれも別に巨大魚じゃなくて、ただの小魚だったってこと?
それが分かったところで、危険度は何も変わらないのもつらい話だ。
「凹んでばかりはいられませんわね。もっと強い敵と戦ってレベルを上げて、しっかり食べて大きくなって、強くなりませんと」
この辺りのチビイカはかなり減ってきている。そろそろ場所を移動した方がいいかもしれない。
暗がりから少しだけ頭を出して、外を覗いてみる。あれだけたくさんあったチビイカの卵もかなりの量が孵化を終えて、ほとんど残っていないようだ。それに合わせて巨大魚も数を減らしている模様。
それでも巨大魚は完全にいなくなったわけじゃなく、かなりの数が残って周辺を泳ぎ回っている。
「ここで飛び出すと目立ちますわね。こっそり行動する必要がありますわ」
ここまでチビイカを狩ってきて、マジョリーカにも気づいたことがある。
マジョリーカも含めて、小さなイカの体は半分透明なので、あまり目立たず見つけにくい。
でもそれは動かずに止まっている時のこと。水に流されるだけならまだ良いけれど、自分で泳いだりすると、その不自然さがとても目立って見つかってしまうのだ。
つまり動くと目立って狙われる。だからといってずっとここに留まっているわけにはイカないし、泳がないわけにもイカない。大切なのは、目立たないようにコソコソすることなのだ。
半透明なのは良いんだけれど、もしもできることなら背景と同じ色になれないものかしら。
……やってみたらできた。
――スキル『擬態』を発動したダワ。
しかもこれ、最初から技の一つとして身についていたらしい。さらに言うと、どうやら色だけじゃなく、岩っぽくギザギザした感じとか、ツルッとした感じとか、そういう変身もできるみたいだ。
マジョリーカはさっそく習得したばかりの擬態を使い、目立たないように移動を開始した。
もしも見つかったら巨大魚が襲ってくる。
これはまさに命がけの脱出作戦なのだ。




